メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

ご褒美が欲しい

2018-05-25 15:18:40 | 
仁さんと話し始めてから1週間も経たない頃だろうか。
試験勉強に疲れた仁さんからこんなメッセージが届いた。







『今日は絶望。全然上手くいかないよ。メイサさん助けて(笑)』






彼の専攻は、私が超苦手っていうか知識皆無な分野だったで、私は『無理やわ(笑)』と即答した(笑)






『どうしたらモチベーションを保てるのか、いいアドバイスをくれない?』


『勿論あげられるわよ』







私は、んー、と指を唇に当て、考えを巡らせた。






こんなのは、どーお?





ポチポチポチ






『モチベーションを保つには、2つのものが必要なのよ』


『なに?』


『1つは危機感ね』







なるほど、と仁は納得した。






ポチポチポチ







『そしてもう1つは、ご褒美よ』







ピロン






『完璧にわかった。じゃぁ、メイサさんは僕が試験でいい成績を残したら、どんなご褒美をくれる?』







お?私からご褒美が欲しいとな。






『うーん、どんなご褒美が欲しいの?』


『メイサさんからしか貰えないものが良いな』


『うーんじゃぁ、何か日本のものとか?』


『それも良さそうだけど、近いうちに日本に行くから、自分で手に入れられそうだな』


『そうね。逆に私が欲しいわ(笑)』


『メイサさんにお土産買ってくるよ』


『わーい、ありがとう!!嬉しくてハグするかも(笑)』


『喜ぶけど(笑)』






あっそう?
じゃぁ、こんなのはどうですか?






『じゃぁ、試験でいい成績が取れたらラブリーなハグをプレゼントするのはどう?
ま、欧米人にとってはハグは挨拶だけど』






ピロリン






『いいね。確かに僕らは男女問わずハグするけど、メイサさんにしてもらったらそれは他の人とするのとは全然違うよ :)』








可愛い!







私は頬杖をついてニマニマと彼とのご対面を想像した。
初めて電話したその日から、毎日のように、いや、少なくとも2日に一回は電話をしていて、
それは短くて2時間、長くて4時間はかけていた。
仁さんは決定的な言葉こそ言わないものの、私と話す楽しさや、私を魅力的に思っている事を匂わす言葉を幾度となく口にしていた。
そしてそんな彼の態度に、私自身もワクワクとときめいていた。
プロフィールの写真があるとは言え、声しか知らない彼にすっかり夢中だった。
言うなれば、脳内彼氏だった。







仁さんは私のこと、どう思ってるのかなぁ。
私の事好きなのかな?って思っちゃうけど、それは勘違いなのかな。
まぁ、何と言っても会ったこともないしね。
これだけ頻繁に話していても、お互いに魅力的だと思っていても、
会ったこともない人を好きになるなんて、仁さんはバカみたいだと思うかもしれないしな。







会ってみたいなぁ。





私の国に、会いに来ないかな……












そんなある日の会話だ。








『仁さんは読みやすい本だからね』







先日教わった彼の国の表現を使い、私はちょっと彼をからかっていた。
私たちが使っていたアプリには色々と便利な機能がついている。
コメント機能、添削機能、翻訳機能だ。
例えば彼が「メイサさんと今何しているの?」と送ってきたとしよう。
その文章に対して添削機能を使い、「メイサさんは今何しているの?」正しい文章を送信してあげることができる。
コピぺする手間も要らず、添削したい発言を長押しするだけで添削用ページが開けるので、とても便利だった。
とても便利なので、まとも添削以外にも、ふざけて添削することがあった。
たとえば、「メイサさんは話しやすい」と送ってきてくれたなら、
「メイサさんは話しやすいし可愛い♡」と、勝手に付け加えてやったり(笑)
私がこの機能を使ってふざけるのを、仁さん自身も楽しんでいた。



この日も彼が何かしら私についての感想を送ってきたので、
私は上記同様に調子に乗った添削をしてやったのだ。








『メイサさんの添削はいつも正しいね(笑)』


『でしょ?仁さんは読みやすい本だからね』


『僕が言わなくてもメイサさんが全部直してくれるから、すごく楽(笑)』


『やだ、自分でも言ってよ。(笑)あ、じゃぁ私はどう?』


『メイサさんの本?』


『そう。私の本を読んでみて』







なんて返すかしら……








ピロリン







『メイサさんが今考えていることは………












ニンジンケーキが食べたいわ』









(°▽°)








『(何でやねん!)違うわよ〜!(笑)確かに私はウサギだけど!』


『外したか(笑)』







そう、彼は私のことをウサギ扱いするところがあった。
彼は、というか、話の流れの中で『私はウサギみたいに臆病なのよ』とふざけた事があったので、
それ以来私をウサギとして表現する事が多々あったのだ。










『外れだよ〜。もう一回読んでみて』


『メイサさんは………











僕の国に旅行に来たい』









(°_°)










『えっと、半分当たり、かな。確かにあなたの国には行きたいけど』


『半分?難しいな…。先生、ヒントをください』


『あなたは優秀な学生だから、整理してみたらわかると思うわよ』


『整理?』









ポチポチポチ








『1.私はあなたの国に行きたい。
2. 私はあなたの国に旅行に行きたい、は半分合っている。
3.以上の理由から、何が間違っているのかわかるはずです』









すぐに







ピロリン








『A. メイサさんは僕の国に、僕に会いに来たい。』








私は微笑んだ。







『:)』


『当たり?』


『うん』







仁さんは嬉しそうだった。
もしこれが、直接会っていたなら、もっと時間がかかっていたのかもしれないけれど、
オンラインでやりとしているにしては、ゆっくりと、
私達は少しずつ、少しずつ、相手に嫌われまいと、
だけど逸る気持ちは抑えられず連絡だけは頻繁に、
それでも、決定的なことは言えずに、探り探りで距離を縮めて行っていた。






2週間後のことだった。








続きます。