プランク・ダイブ

ＳＦマガジンに掲載されていたイーガンの作品。

はーどえすえふだそうだ。
お話しとしては、ディアスポラのサイドストーリーという感じ。
時代設定や、出てくる用語はディアスポラのままと言っていいだろう。
すでに肉体を捨てた人間達がブラックホールへダイブする。

ダイブするのはクローン達。
重力の地平。まだ誰も見たことのない世界。

しかも、そのデータも実績も持ち帰ることはほとんど不可能。
それでもそこへ向かうのは好奇心と探求心なのだろう。
肉体が無くなったら果たして私は何に興味を向けるのだろうか。
そんなことを考えた。

そしてもう一人の主役ははるか地球からやってきた肉体を尊守する人々。
しかも、閉塞し息詰まった世界から物語を紡ぐためにやってきた、
といいながらも、まったく本質を理解しない父と、その娘。
ある意味で、父親は肉体を体現し、娘は精神を体現しているのか。
しかし、物理現象に興味を持つという娘はどんなものだろう。

ダイブ時に娘は”密航”してくるが、それは解放であり、冒険である。
帰ることが出来なくても、自分の分身が”それ”を体験したという事実が
とても重要なのだろう。

分離した自我は果たして一つになるかという問題は何度もイーガンを
読みつつ考えていることである。

ここでも、分離しダイブするときに喪失感を覚えるシーンがある。
同時に分身が経験したという事実がとても重要なそして満足感を与えるという
くだりはなんとも不思議な気持ちになる。

やはりイーガンはいろいろと考えてしまう作家だ。