めるつばうのおもうこと

めるつはミーム機械としてばうを目指します。

ナラタージュ

2005-11-22 14:36:11 | めるつばうのおもうこと
島本理生。
高校生から大学の時は私はどんな感情を持っていただろうか。
少なくともこういった一途な感情は持っていなかった。いつもなにがしかに怒っていた。

ストイックと言えば聞こえが良いがある一定の距離を絶対に侵させない二人。
だからこそ”泉”という主人公とその相対する”教師。
絶対不可侵だからこその絶対侵略。不器用と言えばそれまでだが私はこれを読んで
ハリネズミのジレンマを思い起こした。
寒い冬に二匹のハリネズミは寒さから身体を寄せ合うけれど寄せすぎると
お互いの針でお互いが傷つく。暖かさを得つつ刺し合わない距離を保たねば
ならない。
納得する部分もあるが流血なくしては伝わらないものもあると考えてしまう。
そうそう、都合良く微妙な距離なんて取れない。

現在の高校生から大学生にはちょっと無いような感じだ。
品が良すぎる。登場人物達すべてがそうだ。
この感覚は恩田陸の「夜のピクニック」でも受けた。品行方正な優等生。
主人公がそうだから周りも自然とそうなっていくのだろうけれど、なんとなく
絵空事っぽく感じてしまう。
のわりには、泉の行動もしつこいなぁと感じる。そのしつこさは登場人物すべてに
感じてしまった。淡泊そうに見えてしつこい。
面白く読めたけれど、一つひとつのエピソードがぼこん、ぼこんと出現して
読み終えた後すべて唐突すぎるような感じがしてしまった。
セックスをするという行為がこれじたいも空々しく、結婚という言葉も
実感がない。たぶん次を読むことは無いだろう。

高校から大学の頃の瞬間の澄んだ感情が思い起こされた。ほんと一時の感情だ。
そして、ある一点へ精神が落ちていく。そう言った意味では主人公の感情が
解らないわけではない。だがしかし、私には戻ったり再会したりする事は
永久に不可能だ。

ハリネズミの背を撫でてみたいと思う。


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