最近は、年齢のせいか、ほのぼのとした映画を選んで観る。
で、山田洋次監督作品の「おとうと」を観に行った。
東京で堅実に生きる姉(吉永小百合)と、大阪で問題ばかり起す弟(笑福亭鶴瓶)が、
姉の一人娘(蒼井優)の結婚式に突然現れ、結婚式をめちゃくちゃにしてしまう・・・。
という話から始まる。
山田監督といえば、ご存知「男はつらいよ」が代表作といえる。
男はつらいよは、渥美清演ずる主人公の寅さんが、旅先などで会ったマドンナにひと目惚れすることで巻き起こる様々なエピソードと、それを取り巻く市井の人々の日常をからめて描かれる。
寅さんは本名、車寅次郎。通称は「フーテンの寅」。
父が芸者との間に作った子で、父が遊び人だったことから、小さい頃に母は家を出てしまう。
戦争で父が出征すると、母親の違う妹・さくらとともに親戚に預けられる。
戦後、復員してきた父に、中学校を卒業したばかりの寅次郎がタバコを吸っているのを見とがめられ、そのことで家を飛び出し行方知れずとなる。
20年後、葛飾区柴又「帝釈天」の参道で団子屋を営む叔父夫婦と妹の前に、ひょっこり現れるというところから話が始まる。
と解説するまでもないが、これをベースに「おとうと」を鑑賞すると、姉と弟の関係性に入り込みやすくなると思う。
日本アカデミー賞を受賞した「たそがれ清兵衛」を観てもわかるとおり、山田監督作品の登場人物は、一般の人が持っている、その俳優のイメージにあった役柄を設定しているので、安心して観ていられることが多分にある。
今回の吉永小百合さんにしても、鶴瓶師匠、蒼井さん、加瀬さんにしても、演じてはいるのだろうけど、無理に演じている風に見えないのは、配役と演出の妙といえるのかもしれない。
この映画のベース、出来の良い兄(小林稔侍)と姉は東京に出てきていて、大衆演劇の役者をしている不出来な弟だけは大阪に居残っているというのも象徴的だ。
途中「出来の良い兄と姉に踏みつけにされて、ひとつも誉められたことがない弟に、姉の生まれてくる子の名付け親になってもらいたい」「母親のいない兄弟の中で、弟の不始末を姉が母の代役のように謝り庇い続けた」というエピソードが語られ、なぜ姉が献身的なのか、少しずつわかってくる。
そのことを「おねえちゃん」という甘えるような呼びかけが幾度となく繰り返されることで、見えない絆、切れそうな絆の存在を確かめるように感じられる。
そして、弟と同居していた女のことを、弟が蔑むように話したことからついに絶縁に至る。
血を分けた親兄弟でも見捨てるようになった現代社会を風刺するかのように、身寄りのない人のターミナルケア施設に弟が入所していることを知らされる。
その施設で、お互い縁を切った形で別れた姉弟が再会する。
いよいよ最後の夜、一人で逝くことを怖がる弟の腕に、姉がリボンで自分の腕とを結ぶ。
ここではじめて、絆が目に見える形になる。
息をひきとる前、姉の娘・小春が再婚相手とともに駆けつける。
弟は、混濁した意識の中でVサインをしてみせる。
そして、スタッフの声かけを待っていたかのようにこときれる。
人に迷惑ばかりかけて、存在価値が無いとレッテルを貼られた弟が、死ぬ間際まで自分の存在を理解してもらおうとしていたことを暗示しているのだ。
そして、唯一誇りに思っている自分が名付け親になった小春の幸せを思いながら・・・。
吉永小百合さんと鶴瓶師匠の共演は、前作「かあべえ」以来だ。
このミスマッチともいえるコンビは、妙に面白い組み合わせだ。
これからも、このコンビは続くのかもしれない。
しかし、寅さんが亡くなることで続編を考えていたにもかかわらず製作できなかったことの後悔からか、今回も1話完結となった。
次回作は、なんだろう?ぜひ、期待したい。
「おとうと」をより楽しみたいとお考えなら、寅さんを観て、かあべえを観て、それから出かけるといい。
それにしても、死期を「4月7日」に設定したと思うが、その日はなんの日なんだろう?
ちなみに、
法律では、扶養義務者として直系血族(両親、祖父母、子、孫)及び兄弟姉妹を第一にかかげているのに対し、相続人は配偶者と子を第一順位としている。
最近は、配偶者と子にさえ、扶養を拒み、拒まれる関係が増えている。
年間、3万人を超える自殺者と、やはり3万人を超える無縁死が報道された。
殺人も頻繁にニュースにのぼる。
こんな世の中になったのは、何が原因なんだろう?
解決する治療法や処方箋はないのだろうか?
そのためにも、ぜひ、観ておきたい映画だと思う。
で、山田洋次監督作品の「おとうと」を観に行った。
東京で堅実に生きる姉(吉永小百合)と、大阪で問題ばかり起す弟(笑福亭鶴瓶)が、
姉の一人娘(蒼井優)の結婚式に突然現れ、結婚式をめちゃくちゃにしてしまう・・・。
という話から始まる。
山田監督といえば、ご存知「男はつらいよ」が代表作といえる。
男はつらいよは、渥美清演ずる主人公の寅さんが、旅先などで会ったマドンナにひと目惚れすることで巻き起こる様々なエピソードと、それを取り巻く市井の人々の日常をからめて描かれる。
寅さんは本名、車寅次郎。通称は「フーテンの寅」。
父が芸者との間に作った子で、父が遊び人だったことから、小さい頃に母は家を出てしまう。
戦争で父が出征すると、母親の違う妹・さくらとともに親戚に預けられる。
戦後、復員してきた父に、中学校を卒業したばかりの寅次郎がタバコを吸っているのを見とがめられ、そのことで家を飛び出し行方知れずとなる。
20年後、葛飾区柴又「帝釈天」の参道で団子屋を営む叔父夫婦と妹の前に、ひょっこり現れるというところから話が始まる。
と解説するまでもないが、これをベースに「おとうと」を鑑賞すると、姉と弟の関係性に入り込みやすくなると思う。
日本アカデミー賞を受賞した「たそがれ清兵衛」を観てもわかるとおり、山田監督作品の登場人物は、一般の人が持っている、その俳優のイメージにあった役柄を設定しているので、安心して観ていられることが多分にある。
今回の吉永小百合さんにしても、鶴瓶師匠、蒼井さん、加瀬さんにしても、演じてはいるのだろうけど、無理に演じている風に見えないのは、配役と演出の妙といえるのかもしれない。
この映画のベース、出来の良い兄(小林稔侍)と姉は東京に出てきていて、大衆演劇の役者をしている不出来な弟だけは大阪に居残っているというのも象徴的だ。
途中「出来の良い兄と姉に踏みつけにされて、ひとつも誉められたことがない弟に、姉の生まれてくる子の名付け親になってもらいたい」「母親のいない兄弟の中で、弟の不始末を姉が母の代役のように謝り庇い続けた」というエピソードが語られ、なぜ姉が献身的なのか、少しずつわかってくる。
そのことを「おねえちゃん」という甘えるような呼びかけが幾度となく繰り返されることで、見えない絆、切れそうな絆の存在を確かめるように感じられる。
そして、弟と同居していた女のことを、弟が蔑むように話したことからついに絶縁に至る。
血を分けた親兄弟でも見捨てるようになった現代社会を風刺するかのように、身寄りのない人のターミナルケア施設に弟が入所していることを知らされる。
その施設で、お互い縁を切った形で別れた姉弟が再会する。
いよいよ最後の夜、一人で逝くことを怖がる弟の腕に、姉がリボンで自分の腕とを結ぶ。
ここではじめて、絆が目に見える形になる。
息をひきとる前、姉の娘・小春が再婚相手とともに駆けつける。
弟は、混濁した意識の中でVサインをしてみせる。
そして、スタッフの声かけを待っていたかのようにこときれる。
人に迷惑ばかりかけて、存在価値が無いとレッテルを貼られた弟が、死ぬ間際まで自分の存在を理解してもらおうとしていたことを暗示しているのだ。
そして、唯一誇りに思っている自分が名付け親になった小春の幸せを思いながら・・・。
吉永小百合さんと鶴瓶師匠の共演は、前作「かあべえ」以来だ。
このミスマッチともいえるコンビは、妙に面白い組み合わせだ。
これからも、このコンビは続くのかもしれない。
しかし、寅さんが亡くなることで続編を考えていたにもかかわらず製作できなかったことの後悔からか、今回も1話完結となった。
次回作は、なんだろう?ぜひ、期待したい。
「おとうと」をより楽しみたいとお考えなら、寅さんを観て、かあべえを観て、それから出かけるといい。
それにしても、死期を「4月7日」に設定したと思うが、その日はなんの日なんだろう?
ちなみに、
法律では、扶養義務者として直系血族(両親、祖父母、子、孫)及び兄弟姉妹を第一にかかげているのに対し、相続人は配偶者と子を第一順位としている。
最近は、配偶者と子にさえ、扶養を拒み、拒まれる関係が増えている。
年間、3万人を超える自殺者と、やはり3万人を超える無縁死が報道された。
殺人も頻繁にニュースにのぼる。
こんな世の中になったのは、何が原因なんだろう?
解決する治療法や処方箋はないのだろうか?
そのためにも、ぜひ、観ておきたい映画だと思う。
お立ち寄りありがとうございます。
「幸福の黄色いハンカチ」も、
国策からエネルギーを石炭から石油にシフトさせたことで、就労条件が悪化するばかりの夕張炭坑が舞台でした。
あのいくつもはためく黄色いハンカチに感動して、ついつい夕張まで出かけたことを思い出します。
「おとうと」でもリボンが印象的でした。
エンドロールに「市川崑監督に捧げる」とあったので何のことだろう?と思って調べたら、同じ題名で市川監督が映画を撮っていて、その中で姉と弟が腕をリボンで結び、絆を表現していたと知りました。
恋人同士は赤い糸ですが、姉弟となると、それより太いリボンになるんですね。
gooブログの映画ジャンルから、こちらにたどり着きました。
私も、先日、映画「おとうと」を、見てきました。
山田監督の作品を、ちゃんと見たのは、
「幸福の黄色いハンカチ」が、最初でした。
「寅さんシリーズ」は、父が映画好きで、TVで放送していたのを、
子供の頃に、少しだけ、見た記憶があります。
ご紹介してくださった、作品を見てから、
また、映画「おとうと」を、再び、見たいと思います。
ありがとうございました。