私が、その言葉(諺)を初めて聞いたのは、小学校の4,5年生の時であった。
あの8月の宵、私は、仲間達と橋の上に屯していて、川の上を明滅しながら飛んでいる蛍の群れを見ていた。誰かが脈絡も無く「早く正月にならないか、な・・・」と言ったら、中学生のガキ大将の広志が、「来年の事を言うと鬼が笑うぞ」と言ったのだ。無論、私は、言葉の意味が解らなかったが。仲間達が「そうだ、そうだ、来年の事を言うと鬼が笑う、ぞ」と囃したて、どっと笑ったので、私も笑った。
いや、いや、早いもので、今年も後3ヶ月と一寸だ。矢っ張り、今年の残りの日数を数える私を、鬼が笑っているのだろうか。
『 片付かぬ 事の多くて 憂い九月 』 石 兎