D県警シリーズの『陰の季節』収録作品、『黒い線』で登場した似顔絵かき婦警・平野瑞穂のその後を描いた短編集です。
「だから女は使えねぇ!」と陰に陽に言われながら、自分でも自問自答を続けつつ、職務をひたむきに果たす瑞穂。どうも警察組織というものは個人の正義感とは相容れないようですね。もしかすると、女性だけでなく、男女問わず職員が大切にされていない、使い潰されているのかも知れません。大事にされるのは高級官僚ばかり、みたいな?
様々な対話に、「相手を尊重する」という要素がずっぽり抜け落ちてしまっているような粗暴さが印象に残りました。そんな厳しい環境の中で悩み、間違いながらも一途に頑張る瑞穂はけなげでいい子。心が折れそうになりながらも、踏ん張る彼女。果たして彼女の努力が報われることはあるのか?
日本ならではのドラマですね。こんなに戦わなくては認められない、いや、戦っても認められない男尊女卑社会・日本は異常としか感じられません。