徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:島田荘司著、『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』(新潮文庫)

2018年09月25日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』は御手洗潔シリーズの第17作目。表題作のほか、そのプロローグに当たる短編『シアルヴィ館のクリスマス』が収録されています。

本編はとある老婦人が御手洗の事務所に事件解決の依頼ではなく物珍しさで訪ねておしゃべりをするというなんともほのぼのとした感じで始まります。しかし、御手洗は老婦人の話ー彼女の友達の息子夫婦が教会のバザーで一緒になり、途中その友達は具合が悪くなり救急車で運ばれたが、息子夫婦は「やることがある」と言って付き添わず、しばらくして教会前の花壇を掘ったーから子どもの誘拐事件を推察し、解決しようとします。救急車で運ばれたご婦人はそのまま亡くなってしまいます。彼女は時価十数億円というロマノフ王朝から譲り受けたセント・ニコラスのダイヤモンドの靴を放蕩息子ではなく、孫に直接譲渡することに固執していました。さて、誘拐されたはずの娘・美紀は御手洗が事情を確かめに息子夫婦の自宅を訪れた際にひょっこり戻ってきます。誘拐犯も間もなく捕まりますが、彼らは身代金として埋められたはずのダイヤモンドの靴を取り出していないと主張し、事実可能な闇ルートに出た形跡は見つかりませんでした。さて、ダイヤモンドの靴はどこへ消えたのか?

おばあさんが一人亡くなってしまうことを除けば、随分と微笑ましい結末のミステリーです。こういうほのぼのした感じのミステリーもたまにはいいですね。

『シアルヴィ館のクリスマス』は本編の事件の約20年後の話で、なぜロマノフ家のアレクサンドル3世が日本人使者の一人にダイヤモンドの靴を贈ることになったか、その理由のヒントになるエカテリーナ女帝のコレクションと彼女自身の逸話が語られます。ちょっとした歴史の裏話を御手洗と同僚たちが語り合うシーンです。

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