徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手』(角川文庫)

2022年06月11日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

本シリーズ『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論』のIV巻が出たのは4月半ば。2か月も経たないうちにもう続巻が書き下ろされ、しかも先月は新たにシリーズ化しそうな『JK』が上梓され、相変わらずの著者の著作スピードに頭が下がる思いです。

私はこのシリーズを自動購入に設定しており、昨晩V巻が私の電子書籍ライブラリーに追加されたので、就寝前に「出だしだけでも」と本当にちょっと見るつもりで読み始めて、結局、止まらなくなって気が付いたら最終章まで読み終わり、小鳥たちのさえずりを聴くことになってしまいました。
恐るべし、松岡圭祐。その読者牽引力は驚異的です(もちろん全作品ではありませんが)。

さて、V巻の事件は大規模な惨劇から始まります。日本小説家協会の懇親会会場で大規模火災が起き、小説家をはじめ多くの出版関係者が亡くなった。生存者はわずか2名。現場には放火の痕跡が残されていたため、大御所作家を狙った犯行説が持ち上がる。
ネット上では“疑惑の業界人一覧”なるサイトが話題になり、その中には李奈の名前もある。本当に放火犯はいたのか?

沈痛かつ不穏な空気が漂う出版業界の中、III巻のクローズドサークル編で殺されそうになったところを李奈に救われたベストセラー作家・櫻木沙友理が李奈に一緒に真相を解明しようと言い、沙友理と同じ町内に住む「万能鑑定士Q」莉子も協力することになる。

著者はこのシリーズでは本格派推理小説にチャレンジしているようで、この巻も「信頼できない語り手」というミステリーの手法を取り入れているのですが、それを堂々とタイトルに使うというのは前代未聞と言えます。
このため、読者は事件の謎解きと同時に、一体誰が信頼できない証言者なのか頭を悩ますことになります。

また、ファンには嬉しい「万能鑑定士Q」の凛田莉子改め小笠原莉子の登場。30代前半で二児の母になった彼女は探偵となった小笠原の協力を得ながら鑑定士の仕事を継続しているという近況が知れて、懐かしい知り合いに再会したような喜びがあります。




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