ミステリーの大御所・松本清張の名作『点と線』(1957)は私にとって多くの題名だけ知っている作品の1つでしたが、ついに自ら読む機会に恵まれました。
この作品では最初に犯人と思しき人物・安田辰夫が登場し、次に彼の馴染みの店の係女中お時と、汚職事件捜査の渦中にある省庁の課長補佐・佐山憲一が博多の玄界灘で青酸カリによる情死体となって発見されます。推理するべきは真犯人ではなく、問題の安田の完璧なアリバイを崩し、動機は何であったか、汚職事件との関係があるのかないのかを探ることです。「情死」扱いなので捜査本部などは立てられず、納得がいかない一握りの刑事たち疑問点を追及していき、雲を掴むような話から刑事の「カン」を活かして徐々に真相に迫っていく展開。鉄道および飛行機の時刻表(昭和32年のダイヤ)が駆使される緻密なトリックが面白いですね。
警視庁の刑事と地方警察著の刑事が手紙や電報でやり取りしていたりして時代を感じさせます。文体や細かな言葉遣いなども格調高い感じで、今風の小説とは全然雰囲気が違うのも興味深いです。