例外的に紙書籍をAmazonで予約購入したのが本書『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』でした。
その理由は、著者と田中泰延さんとの対談の「ぶっちゃけ」たほうの後半ライブを視聴できる条件がそれだったから。
対談は非常に楽しかったし、ようやく届いた本書も面白かったです。
堀元見氏はYouTubeの『ゆる言語学ラジオ』の出演・プロデュースしており、私はこのチャンネルで彼のことを知りました。慶応義塾大学理工学部卒業後、就職せずに「インターネットでふざける」を職業にしたという変わり種で、著書に『教養悪口本』(光文社)があります(そちらは未読)。
さて、そのような著者がビジネス書ベストセラーを100冊読んで、教えをスプレッドシートにまとめて行くプロセスをYouTube公開しながら執筆したのが本書なわけですが、このようなノリの著者がまじめな「ビジネス書まとめ本」を上梓するはずがありません。
結論から申し上げますと、本書は「現代アート」です。
とはいえ、装丁といい、中身のレイアウトといい、最後に合宿セミナーの宣伝ページがあることといい、作りはビジネス書そのもの。
うっかり騙されて買ってしまって怒り狂うビジネス書愛読者たちの反応も込みで「作品」なのだそうです。
パロディの本気度と全力でふざける芸は、確かに「アート」と言ってもいいと思います。
通常であれば本を読んだら目次も書評に収録しますが、本書に限ってはそれは無意味なので止めておきます。
本書を通じて、いかに矛盾に満ちたいい加減な主張が本になっており、またそうしたものをたくさん買う人々が多くいることがよく見えてきます。
著者はふざけてはいますが、実際にビジネス書100冊のポイントを抽出しているので、これ一冊で確かに「ビジネス書あるあるのポイント」を知り、それらを比較したり、著者のように変な繋げ方をして楽しむこともできます。
そもそも、「成功者の真似をすれば成功する」という考え方自体に問題があり、「自分はこれで成功したから、これが絶対正しい」というスタンスで書かれた書籍は「サンプル1」の話なので、大して参考になるような所見は得られないものです。
けれども、ビジネス書ビジネスはまさにその間違った幻想を土台にして成り立っています。そうした書籍たちを実際に100冊も読み漁ってデータを集め、結局「自分で考える」結論にしかならないことを証明する(ふざけながら)。
本書の「正しい」読み方や解釈の仕方などはなく、著者の言うように「お好きにどうぞ」という感じなのでしょうけど、私は一緒に笑い転げるのが健全な楽しみ方だろうと思います。