景気のいい話題の多いドイツにおける悲しい統計が、貧困率やホームレスに関する統計です。BAGWの最新の予想によれば、2018年のホームレス数は120万人にのぼることになるようです。
ホームレスとは賃貸契約などによって確保された独自の住居がない状態を指し、避難施設や保護施設、あるいは親戚・友人・知人などの家に居候している状態もホームレスに含まれます。路上生活者はホームレスのごく一部に過ぎません。
ホームレスに関しては公式の全国統計がなく、唯一のまとまった推定統計は連邦研究会ホームレス支援協会(BAGW)によるものです。全国統計がないのは政治的理由によるものと見られ、ホームレスなどを対象とした福祉は州およびその下の自治体の管轄であり、連邦政府による政策は不要であるというのがこれまでの政府の姿勢でした。もし公式な全国統計を取るようになれば問題が可視化されてしまい、なんらかの政治的対応を迫られることになるため、わざと様々な理由をつけて全国統計を取らないようにしていると考えられます。しかし最近では少なくとも大都市においては少しずつ政治的姿勢に変化が見られ、例えばハンブルクでは路上生活者の統計を取るようになり、現在約2000人いると公表しています。また、ベルリンは現状把握のためにそうした統計を取ることを計画しているらしいです。
現在統計として出ている最新のものは2016年度のもので、そこには新たに難民がカウントされています。それによればホームレスは約86万人おり、うち44万人が難民認定を受けた人たちだそうです。また、路上生活者は約52,000人で、2014年の39,000人から33%増加しています。
難民を除くホームレス42万人のうち約29万人(70%)が独身者、13万人(30%)がパートナーもしくは子どもと同居。子どもおよび未成年者のホームレスは約32,000人(8%)。
性別で見ると成人男性が全体の73%を占め、女性は約27%の10万人と男性に比べればまだまだ少数ですが、2011年から3%ほど増加しています。
国籍で見ると、難民を除くホームレスの約12%(5万人)がEU域内出身者で、その多くが路上生活を強いられています。大都市では路上生活者の約半数がEU域内出身者のようです。就職活動に失敗し、ドイツ人でないために生活保護のような福祉が受けられずに路上生活になってしまっているようです。就職できなかったEU域内出身者に対して帰国までの支援金を1か月支給する制度があるのですが、知られていないかもしくは帰国したくないまたはできない事情があるのでしょう。
ホームレスが増加している背景として、まずは大量に流入してきて施設に収容されている難民が一緒にカウントされるようになったこともありますが、貧困率が全体的に上昇していること、同時に貧困リスク率(「マイルド貧困」とも言えるかもしれません)が上昇していること(2000年の11%から2016年の17%)、公営住宅が減少してきたこと、家賃の高騰なども見逃せないファクターです。
貧困リスク率の定義は「正味等価収入(Nettoäquivalenzeinkommen)」の60%以下の収入しか持たない人の全人口における割合です。正味等価収入の算出方法は複雑ですが、おおよそ一人当たりの標準的収入(可処分所得)と考えればいいと思います。
参照記事:
Zeit Online, 14,02.2019, "Bald könnte es 1,2 Millionen Menschen ohne Wohnung geben(近々ホームレスは120万人に)"
BAGW, "Zahl der Wohnungslosen(ホームレス統計)
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