徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:海堂尊著、『ブラックペアン 1988』上・下(講談社文庫)

2018年05月13日 | 書評ー小説:作者カ行

昨日シリーズ最新作の『スリジエセンター 1991』を読んで、前作が気になってしまい、『ブラックペアン 1988』上・下を再読してしまいました。2012年に1冊にまとめられた新装版が出ましたが、私が読んだのは上下巻に分かれていた2009年発行の初版本です。12月半ば発行でしたので、私が読んだのはおそらく2010年が明けてからで、約8年半前のことなので内容をほとんど覚えてませんでした。覚えていたのはブラックペアンが何に使われたか、くらいです(笑)

上・下巻に分かれてますが、分ける意味があったのか疑問に思うほど薄っぺらで、各200ページ余りです。

さてストーリーですが、タイトルにもあるように時は1988年のバブル真っ盛りのころ。「神の手」を持つ佐伯教授が君臨する東城大学総合外科学教室に、帝華大の「ビッグマウス」あるいは「阿修羅」と呼ばれる高階講師が食道癌手術を簡易化するという新兵器「スナイプAZ1988」を手土産に乗り込んできます。佐伯教授は「ビッグマウス」の「小天狗」のとけなしつつも、やりたいようにやらせますが、医局の万年平局員にして高い手術手技を持つ渡海が高階に噛みつきます。

下巻ではスナイプを使ったオペが目覚ましい戦績をあげたので、高階が最初に切った啖呵の是非を問うために、スナイプオペを若手外科医だけにやらせるように命じ、高階講師には立会も許さない。また、渡海はどうやら佐伯教授と因縁があるらく、復讐の機会をうかがっています。さて、何が起こるのか?

と、緊迫感のある話運びですが、語りの視点は医局1年目の新米外科医・世良雅史なので、新人の悲哀なども語られ、ハイレベルバトルのとっつきにくさを緩和しています。全体的に鋭い筆致で、再読でも十分面白かったです。まあ、話の大半を忘れていた、というのもありますが。

それにしても、佐伯教授とやらは王様ですね。立場が下とは言え成人の講師や医局員に向かって「ビッグマウス」、「小天狗」、「小坊主」とか呼びかけ、名前を呼ばないことが、ムッとはしても受け入れられているところが時代の違いを感じます。


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