徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ:シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙(2017)

2017年05月08日 | 社会

5月7日はフランス大統領選が国際メディアを賑わわせていました。結果はご存知の通り無所属のエマニュエル・マクロンが約65%を得票し、35%得票した極右政党フロン・ナシオナルのマリーン・ルペンに勝利しました。西側諸国のリベラル派はさぞ結果に安堵したことでしょうが、忘れてはならないのは、35%の得票率がフロン・ナシオナル創立以来の快挙だという事実と、既存政党が党派を問わず極右勢力を抑制するためだけにマクロンに投票するように有権者に呼びかけたにもかかわらず投票率が例年より低めにとどまったことです。これの示すことは、フランス国民の大半がどちらの候補者も支持できず、投票に行った人たちの多くがルペンを勝たせないためだけにマクロンに票を入れたということでしょう。マクロンがすぐにでもしなければならないことは新党を結成し、6月に控えた国民議会選挙で議会における支持基盤を確保することです。そこである程度の勢力が形成されれば、彼の掲げた改革を実施する可能性も出てきますが、そうでなければフランスの状況は何も変わらず、政治に対する失望が広まり、次はフロン・ナシオナルを抑えることができなくなるだろうと予想されています。その意味でマクロンの今後はフランスだけではなくEUの将来にとっても重大事項です。ルペンが反ドイツ・反EUを打ち出したのに対して、マクロンはEU支持、ドイツとの緊密な協力を打ち出しています。彼のドイツ側のパートナーとなるのはメルケル現首相かマルティン・シュルツ元EU議会議長か決定するのは4か月後です。そのドイツ連邦議会選挙の傾向が読み取れると言われるのが、フランス大統領選と同日に行われたシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙及び来週の日曜日、5月14日に行われるノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙です。

前置きが長くなりましたが、以下が昨日のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙の結果です。

CDU(キリスト教民主同盟) 32%(+1.2)
SPD(ドイツ社会民主党) 27.2%(-3.2)
Grüne(緑の党) 12.9%(-0.3)
FDP(自由民主党) 11.5%(+3.3)
Piraten(海賊党)1.2%(-7.0)
SSW(南シュレスヴィヒ有権者連合)3.3%(-1.3)
Linke(左翼政党) 3.8%(+1.5)
AfD(ドイツのための選択肢) 5.9%(+5.9)
その他 2.3%(-0.1)

AfDの州議会入りは回避されませんでしたが、全国平均の支持率よりずっと低い得票率(5.9%)に終わったことは注目に値します。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の有権者はローカルな問題の方を重要視する傾向が強いのかも知れません。その場合反EU、反イスラム、反難民を掲げるAfDには州政治に重要な政策にかけるため、得票が難しくなります。

投票率は64.2%で前回の2012年の時よりも4ポイント改善されました。

シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会は73議席から成り、投票結果により以下のように割り当てられることになります。

通常、政党が州議会入りするためには最低5%の得票が必要条件ですが、SSWはデンマーク系やフリース系の少数民族のための政党であるため、5%に達しなくても議会に議席を得られることになっています。

現行のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州政府はSPD、緑の党、SSWの3党による「海岸連立政権(Küsten-Koalition)」と呼ばれる連立政権ですが、その主要政党である3党が軒並み得票率を減らしているため、選挙結果は現行政府の否定と解釈されています。

現州首相であるトルステン・アルビヒ(SPD)は現職メリットを生かして得票率35%を目指していましたが、30%を超えることがなく、SPDの新党首マルティン・シュルツの人気による「シュルツ効果」も全く現れず、むしろこれまでほとんど無名だった若い新州首相候補ダニエル・ギュンター(CDU)の州政治のテーマを重点的に扱った選挙運動とメルケル首相の安定性によって大きく差をつけられることになったため、明確な敗北を認めざるを得ない状況です。

理論的にはSPD、緑の党、FDPのいわゆる「信号機連立(Ampelkoalition)」が成立することによって過半数を超える政権が可能です。しかし、最大勝利者であるCDUから見れば、政権交代が論理的な結論であり、今後の連立交渉はCDUが舵取りすべきものですで、その場合はCDU、緑の党、FDPのいわゆる「ジャマイカ連立」が可能です。もちろんCDUとSPDのいわゆる「大きな連立」も可能ですが、これでは負けたSPDが政権参加することになるので、あまり有権者の意志を反映しているとは言えません。

 

さて、来週はノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙です。一応私も有権者ですが、まだ投票先は決まっていません。

参照記事:

Tagesschau, 2017 Schleswig-Holstein: Vorl. amtl. Ergebnis, 2017.05.07

ZDF heute, Landtagwahl in Schleswig-Holstein: Hochrechnung: Küsten-Koalition geht baden, 2017.05.07


スペイン・アンダルシア旅行記(1)

2017年05月04日 | 旅行

旅行の日程、ホテルなど

アンダルシアを回るのに2週間まとまって休暇を取るか、1週間ずつ2回に分けるか悩んだ末、1週間ずつ2回に分けることにしました。というのもだんだん年を取って疲れがたまりやすくなっているので、自分の脚でいろんなものを見て回るスタイルの旅行を2週間も続けられないと思ったのが理由です。

というわけでアンダルシア旅行第1弾は、4月25日~5月2日の1週間。ただし4月25日のフランクフルトからのフライトが早朝だったため、前日にフランクフルト空港近くのホテルにお泊りしたのでトータルで8泊となりました。

4月24日 フランクフルト宿泊(Ibis Frankfurt Airport

4月25日 フランクフルト発セビリヤ着、セビリヤで1泊(Novotel Sevilla Marqués del Nervion

4月26日~4月28日 グラナダ宿泊 (Ibis Granada

4月29日~5月1日 セビリヤ宿泊 (Ibis Sevilla

5月2日 セビリヤ発フランクフルト着、ICEで帰宅

今回の旅行ではすべて Accorhotels チェーンのホテルを利用しました。Accorhotels のメンバーズカードで10%の割引が効くというのが理由です。Ibis は三ツ星ホテルで、Novotel は四つ星ホテルです。設備や朝食は四つ星ホテルの方がいいに決まってますが、1泊や2泊ならともかく、8泊も四つ星ホテルとなると予算が厳しくなってしまうので、結局殆ど Ibis に泊ることになりました。バカンスの豪華さは味わえませんが、フツーに満足できるホテルです。

Ibis Frankfurt Airport:

Novotel Sevilla:

Ibis Granada:

Ibis Sevilla:

スペインの Ibis ホテルの朝食の特徴はサラダバーなどの野菜類がなく、その代わりに果物が豊富にあるということでしょうか。ゆで卵やかき卵の代わりに地元料理の一つ Tortilla de patatas と呼ばれるジャガイモの入ったオムレツがあること、そしてハムは決まってセラノ・(生)ハムが提供されるのも特徴ですね。

食べ歩き

ホテルの朝食では地域色は大して出ませんが、旅行の大きな楽しみはやはり旅先の地元料理を堪能することでしょう。できるだけ観光客が多くないところ、地元の人が好んで行くようなところを探して食べるようにしていました。

スペインとドイツでは食べる時間が大分違います。ドイツではランチタイムと言えばすでに11時半に始まり、遅くとも3時には終了します。ところがスペインではランチタイムが1時に始まり、遅い所で5時に終わります。朝食が遅ければそれで問題有りませんが、早起きして朝食を8時くらいに食べていると、ランチにありつけるまでちょっとつらい思いをすることになります。

ランチタイムがずれているので、もちろんディナータイムもずれます。ドイツではディナータイムは既に6時半から始まるところがあり、9時または10時にはキッチンが終わってしまい、温かいものが提供されなくなりますが、スペインではディナータイムは早くて8時からのようです。7時に開いてるレストランは多分観光客向けのところだけではないでしょうか。キッチンが終わるのは11時とか0時のようです。スペインのリズムは夜型の私たちにはぴったりだと思いました。

さて、地元の人たちが行くようなレストランを目指したのはいいのですが、そういうところは大抵メニューがスペイン語のみです。私もダンナもスペイン語はできないため、英語・フランス語・イタリア語の知識を総動員してスペイン語の意味を推察したり、またはオンライン辞書を引いたりしながら、メニューの読解に励みました。

4月25日、セビリア:

Taberna Galia は Novotel Sevilla の隣にあるレストランというか居酒屋で、この時は空腹が酷くて色々探すのはやめて、取りあえず近くだから座ってみた、感じでした。Menu del dia(日替わりメニュー)はドリンク、前菜、主菜、デザートまたはコーヒーから成り、前菜と主菜はいくつかある中から選べるようになっています。値段は11.50€。

前菜:Salmorejo&Paella

主菜:残念ながらスペイン語名はメモできませんでしたが、ピーマンの白身魚詰めとポークリブ。

デザートはチョコレートケーキのようなケーキでしたが、上の白っぽい部分が何かは不明。

 

夕食はもうちょっとまともなレストラン、Tapas Viapol で。

ここではアラカルトで食べました。

注文する前に出されたオリーブオイルたっぷりのポテトサラダ。

チーズを焼いたものとTataki de atun(マグロのたたき)。

Champiñones con Trigueros y Langostinos(マッシュルーム、グリーンアスパラ、エビ)。これは Tapa ではなく、確か Racio(大皿)。隅っこしか映ってませんが、Aceitunas Gordales(ゴルダレス・オリーブ)。

Calamares Fritos(イカリング)、大皿。

飲み物を加えて、〆て48€と言った所でした。どれもおいしかったです。

4月26日、グラナダ:

お昼ご飯は移動中、Autovia(高速道路)沿線のレストラン Rio Blanco で軽く済ませました。このレストランは TripAdvisor や Google には掲載されていません。

ダンナが頼んだツナサラダはまあ普通でしたが、私が頼んだ Bocadillo con atun (ツナサンド)は本当にツナしか入ってなくてびっくりでした。

 

夜はグラナダでもかなり人気のあるレストラン、Bodegas Castañeda で。

Gazpacho(冷たい野菜スープ)、Pastel de salmón(サーモンパイ)。

カナペ盛り合わせ(小)。

Mejillones con anchoas(貽貝とアンチョビ)。

写真は撮りませんでしたが、この他にベーコンとソラマメの炒め物を食べました(これはあまりおいしくなかった)。お値段はトータルで50€弱で、スペインのレストランにしては割高な感じでした。

4月27日、グラナダ:

この日はお昼からガイド付きでグラナダ散歩ツアーに参加しました。無料ですが、ツアー終了の時にチップを渡すことになってます。Plaza nueva にあるツーリストオフィスでバウチャーをもらって参加します。そのツアーの途中で立ち寄った生鮮市場 Mercado San Agustin で地元ワイン Vermut を頂きました。名前の由来はドイツ語の Wermut(ニガヨモギ)らしいですが、白ワインをベースにした香草入りフレーバーワインで、食前酒として好まれているものです。

 あんまりおいしかったので、お土産に1本(0.75ℓ、4€)買いました。

地元の方はこの Mercado でよくお昼ご飯を安く食べるそうです。私たちはツアー中でしたのでちょっとヴェルムートを飲んだだけでしたが。15時には Mercado の中のお店が殆ど閉まってしまうので、要注意。

ツアー終了後に遅い昼食を食べたのはLa Vinoteca。Menu del dia (前菜、主菜、デザート、ドリンク)は10.95€。

Queso manchego(羊のチーズ)はサービス。

マッシュルーム入りかき卵。Tortilla con Champiñones だったかな?

グリーンアスパラのリゾット(Risotto de esparragas だったと思います)。

デザートはバニラアイスのチョコソースがけ。

これで10.95€なんて、本当にドイツでは考えられないお値段。ドイツなら最低15€はしそうですね。どれもおいしかったです。

ガイドなしで市街観光をした後のディナーは、ガイドさんに勧められた地元の人に人気のレストラン Los Diamantes が混雑し過ぎて入れなかったため、裏道 Calle Hospital de Santa Ana にあった Google にも登録されてないレストランで Menu del dia を頂きました。こちらは前菜、主菜、デザートのみで9€、ドリンクは別でした。

なんとなくパスタの気分だったので、Macarrones boloñeses(ボロネーゼ風マカロニ)。

Pescadilla frita(メルルーサの若魚のフライ)。

Flan(プリン)。なんとなく形がプッチンプリンを思い出させるような…

安かったですが、お味の方はまあまあという程度でした。

4月28日、グアディクス(Guadix):

この日はグラナダから東へ約60㎞の高原にある洞窟住居で有名なグアディクスへ行きました。60㎞も移動すれば雨から逃れられるのではと期待していたのですが、こちらも雨でした。Sierra Nevada というスペインのアルプスとも言うべき山脈に連なる高原なので、グラナダよりも寒くて日中でも9-10度でした。あまりの寒さにディスカウントショップに駆け込んで、適当なポンチョを買って寒さをしのぎました。商店街は14時くらいから17時まで閉まっているので、17時過ぎるまでは洞窟住居博物館で寒さをしのいだ次第です。

昼食は市役所の近くの Liceo Accitano という TripAdvisor には登録されていないレストラン(Google には登録されています)で例によって Menu del dia を頂きました。ここではドリンク抜きで10€。

Crema de calabacín(ズッキーニのクリームスープ)。

 

Merluza en salsa(メルルーサのトマトソース煮)。ダンナの方はサーロインステーキ。

デザートはパンナコッタとエスプレッソ。

スープとパンナコッタはとてもおいしかったですが、メルルーサはまあまあという感じでした。

夜はグラナダに戻って、ホテルの隣の Restaurante Palatino という TripAdvisor に登録されていないレストランへ。現代的な内装と言えばいいのか分かりませんが、好みではありませんでした。うるさいのもマイナスですね。

手始めに albondigas(ミートボール)。

続いてイカリング(Calamares)と蛸足(スペイン語は失念)。蛸足は噛むのがちょっと大変でした。

もう一品、ensalada rusa(ロシア風サラダ)。基本的にポテトサラダにニンジンなどの野菜とツナが入ってます。

ミートボールは美味しかったのですが、他はそこそこでしたね。ビールにオレンジジュース。締めて20€にもなりませんでした。チップ込みで22€。

4月29日、グラナダ~セビリヤ:

この日はお昼くらいまでグラナダをうろつき、その後に西へ約250㎞のセビリヤに向かいました。昼食は高速道路A92沿いの Fuensanta(グラナダ県)というところにある Restaurante Casa Enrique というレストランで。若干高級感のあるレストランで、ウエイターはアラカルトで色々お勧めしてましたが、気を付けて見れば Menu del dia が11€であるではないですか!ドリンク抜きで11€は若干割高になりますが、アラカルトで頼むよりはずっと安く済むので、ウエイターのおすすめを無視して日替わりメニューにしました。担当のウエイターは英語がほとんどできず、会話はフランス語でした。ネイティブ並みにフランス語を話すダンナにほぼお任せ。

アスパラスープ。グリーンアスパラがたっぷりの卵入り野菜スープで美味。

Chuleta de cerdo(ポークカツ)。

Tocino de cielo (カスタードプリン・カラメルソースかけ)。とても上品な味でした。

グラナダ県ではずっとどんよりしてましたが、セビリヤでは素晴らしい青空でした。

夕食は Ibis Sevilla から歩いて行ける範囲で地元の人に人気のあるらしいレストランを Google で探し、Poseidon というレストランに辿り着きました。9時半を過ぎてましたが、結構混んでいて、テイクアウトするお客も割といました。

Ensaladillo(小さいポテトサラダ)。

Gambas al ajillo(ニンニクとオリーブオイルで焼いたスカンピ)。超絶美味!

Pimento del Padrón(シシトウのフライ)ともう半分以上食べてしまった後の Entrecot de ternera (子牛の背肉のステーキ)。シシトウもおいしくて、二皿ぺろりと食べてしまいました。

Choco frito (セピアイカのフライ)。イカ天ぷらに通じるものがあり、さほど脂っぽくなくてとても美味しかったです。

二人で凄く食べた感じがしたのですが、トータルたったの37€でした。物凄いお得感ですね!

4月30日、セビリヤ:

セビリヤではこの日から Feria de Abril(4月祭、復活祭の2週間後に開催)がスタートし、伝統的な晴れ着を着て馬車や馬に乗ってフェリア会場に向かう人たちで非常にカラフルににぎわっていました。フェリア会場近くで道行く人たちを眺めながら食べたのがこれ、Montadito。フランスパンのスライスしたものや、この写真のように小さなパンをトーストしたサンドイッチで、Bocadillo よりも小さいものです。お店の名前は Los Alcalarenos。美味しかったのですが、割高でしたね。Montadito二つとジュース二つで11€でした。

フェリアを見るのに飽きてきて、セビリヤの中心街に戻ってなんとなく入ったのがレバノン料理のレストラン、El Rincón de Beirut

前菜の Mutabal はまだ普通な感じしましたが、

主菜として頼んだご飯ものがびっくりのこんもり山!Kabseh はラム肉とアーモンドの入ったごはん山。

 

Salteado de Pollo は鶏肉と野菜がいっぱい入ったごはん山。

二人で一つで十分でしたね。どちらも半分くらい残してしまったので、持ち帰れるように包んでくれましたが、結局食べずじまいでゴミ箱行きでした。

5月1日、セビリヤ:

この日は朝からアルカサル城の見学ツアーでした(詳細は別途書きます)。ガイド付きの見学ツアー終了後、アルカサル城内のレストランで軽く腹ごしらえ。Empanadilla(パイの一種。これは鶏肉と野菜入り)と Pastel de manzana(アップルパイ)。パイ二つ、コーヒー二つで14€。まさに観光スポットのツーリストプライスでした。アルカサル城は一度出てしまうと再度入場することができないので、もっと庭をゆっくり見るつもりでしたので、仕方ないです。

アルカサル城の庭園をたっぷりと堪能した後は乗り降り自由の観光バスに乗って市内見学。遅い昼食というか早すぎる夕食というか午後5時という半端な時間にバスを降りて Plaza de la Alameda de Hércules という大きな広場にあるレストランの一つ Casa Paco というところでタパスをたくさんいただきました。普段はこの時間帯にはやってないそうですが、5月1日は例外的に一日中営業してたそうです。

Salmón marinada(サーモンのマリナーデ)とensalada de gambas(エビサラダ)。

Dátiles con bacon(ナツメヤシ(またはデーツ)のベーコン巻き)。

Espárragos gratinados(アスパラのグラタン)。

Solomillio a la mostaza (サーロイン、マスタードソース和え)。

Jamoncitos de pollo en salsa (鶏の腿、ソース煮込み)。

Berenjenas con cabra y miel(茄子と山羊のチーズ、ハチミツかけ)。

タパスは一品3-4€。観光スポットのお値段ですね。でもおいしかったです。特にナツメヤシが美味でした。

これだけよく食べたにもかかわらず、体重が変わらなかったのは嬉しい限りです。(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

スペイン・アンダルシア旅行記(2)では私たちが訪れた観光スポットについていろいろ書こうと思います。


スペイン・アンダルシア旅行記(2):セビリア

スペイン・アンダルシア旅行記(3):モンテフリオ(グラナダ県)

スペイン・アンダルシア旅行記(4):グラナダ

スペイン・アンダルシア旅行記(5):グアディックス(グラナダ県)



書評:村田紗耶香著『コンビニ人間』(文春e₋Book)~第155回芥川賞受賞作

2017年05月03日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

村田紗耶香著『コンビニ人間』は第155回(2016年上半期)芥川賞受賞作品ということで一応買っておいた本です。昨夜スペイン旅行帰りで疲れていたにもかかわらず、ベッドに入ってもなかなか寝付けなかったためにこれを読みだして、面白くて一気読みしてしまいました。

芥川賞受賞作品が私の好みに合うことはあまりないような気がしますが、この作品は例外だったようです。

36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
これまで彼氏なし。
オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、
変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、
毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、
完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、
私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。

というのが商品説明です。恐らく主人公の古倉恵子は自閉症スペクトラム障害の一種を患っているのではないかと思われます。「普通」の子供たちが悲しんだり怒ったりすることに何も感じず、かなり突拍子のない問題解決方法(例えばケンカする男の子二人を止めるためにスコップで殴ったり、女の先生を黙らせるために教室で彼女のスカートを引きずり下ろしてしまったり)を取り、叱られてもなぜそれがいけなかったのか理解することができなかったとのことで、叱られたりするのが面倒なために人を避けるようになり、「普通」を演じるために必要とあれば周りに同調して切り抜けるようになります。しかしそれも30代になって結婚もせず、就職もせずバイトという状態のままでは「普通」が演じられなくなってしまいます。そこでもとバイト仲間の男性と同棲してみることにしました。すると周囲の彼女に対する目が一変し、彼女は「こちら側の人間として扱われた」と感じるようになります。その同棲相手である白羽という男はとんでもないろくでなしで、「底辺の人間」とレッテルを張られるのにふさわしい経歴の持ち主なのですが、自分で努力することを嫌い、なんでも周囲のまたは世の中のせいにして、自分は人から干渉されたりレッテルを張られたりするのが嫌いなくせに他人には同じようにけなしたり、レッテルを張って侮蔑してみたりして自尊心を保とうとしているような人です。きっとこういう人がネットでの匿名性を利用してあちこちで的外れな罵りをしまくっているのではと思えます。

この彼と同棲し(性的関係などはなし)、より「普通っぽさ」を装うためにコンビニのバイトを止めて、彼に言われるままに就職活動をするようになるのですが、コンビニという指針というか基準を失った彼女は日常生活にかなりの支障をきたすようになります。このあたりが自閉症スペクトラム障害ではないかと疑われる部分です。

物語はあくまでも主人公の視点から描かれていますが、世間の同調圧力や異分子に対する排他性が実に細やかに描写されており、その苦しさが分かる人には非常によく分かる感じです。同調圧力をかける側、排他する側の人で、そのことに疑問を持たず、無意識でそういうことをしている人たちには共有できない感覚ではあろうと思いますが。
私自身は日本ではどちらかと言えば排他される側の異分子でしたので、主人公の気持ちや彼女と同棲することになった白羽という男の気持ちに同調できることがかなりあります。男の方はそれでも自分に甘すぎて、ろくでなし過ぎますけど。しかしこの「毒」が作品にピリッとしたスパイスを与えているのだろうと思います。 

日本人のメンタリティーは同調圧力の強い排他的なムラ社会をずっと引きずっています。昔はそれがあからさまでしたが、現代では「価値観の多様性」などという幻想が蔓延っている分だけたちが悪いように思えます。誰もが自由で、だからその結果もすべて自己責任で。でも本当は選択の自由などないに等しいことが多いし、周囲の人たちと違うことをするには大変な勇気が必要であったり、勇気を出して違うこと、自分が正しいと思うことをやってみるととんでもない攻撃を実際に受けるようになるなど割と日常茶飯事です。日本人の美徳の一つとされる【和】は、その和を乱す異分子に対する攻撃性によって保たれるもので、排他性の裏返しに過ぎません。この社会メカニズムが学校という軍隊的な教育機関によって徹底的に子供たちに叩き込まれ、使い勝手の良い大量の働き手が生産されてきたのが戦後の日本の実情でした。【自主性】や【自分で考えて行動する】ことは日本社会では建前はどうあれ、実際には歓迎されることはないため、間違うことを恐れ、安心を得るためにマニュアルを求めてそれに従う生き方しかできなくなる人たちが増えることになります。しかしそれでは自分の生き方に確固たる自信など持てるわけはありません。だから違うものに対する耐性が弱く、自分の生き方が揺らがないように、いわば自分の不安を搔き消したいがために、異分子に対してより攻撃的になるのではないかと私は考えています。不安で余裕がないから、「違い」を鷹揚に受け止めたり、ましてや尊重したりするような芸当ができないわけです。今の日本は、私が日本に居た20数年前よりずっと攻撃的になっているように見受けられます。それはきっと不安で余裕がない人が増えていることの表れなのだろうと思えます。

この作品の興味深いところは、そうした現代的問題に切り込みながら、何の倫理的社会批判などを持ち出さず、結論らしい結論も出さず、テンポよくコミカルに現代の実像を描いているところなのではないでしょうか。押しつけがましさがないのがいいと思います。作者の意図がどこにあったかは分かりませんけど。

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書評:川口俊和著、『コーヒーが冷めないうちに』&『この嘘がばれないうちに』(サンマーク出版)

2017年05月03日 | 書評ー小説:作者カ行

4月26日から5月2日までスペイン・アンダルシア旅行に行ってまして、その旅行記は別途記事を書くとして、今日は旅行の移動中に読んだ本の書評を書きます。

川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』&『この嘘がばれないうちに』(サンマーク出版)はシリーズになっており、どちらも4編ずつ短編が掲載されていますが、バラバラに読んでも差し支えないようになっています。過去に戻れるという噂の喫茶店が舞台で、「コーヒーが冷めないうちに」はその喫茶店のウエイトレスで、お客さんを過去または未来に送ることのできる時田数(ときた・かず)が呪文のように唱えるセリフです。

プロローグより:

とある街の、とある喫茶店の
とある座席には不思議な都市伝説があった
その席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるという

ただし、そこにはめんどくさい……
非常にめんどくさいルールがあった

    1. 過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事はできない
    2. 過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない
    3. 過去に戻れる席には先客がいる
      その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
    4. 過去に戻っても、席を立って移動する事はできない
    5. 過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、
      そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ

めんどうくさいルールはそれだけではない
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる

喫茶店の名は、フニクリフニクラ

あなたなら、これだけのルールを聞かされて
それでも過去に戻りたいと思いますか?
 

『コーヒーが冷めないうちに』(2015年12月5日発行)は次の4編が収録されています。

第1話『恋人』結婚を考えていた彼氏と別れた女の話

第2話『夫婦』記憶が消えていく男と看護師の話

第3話『姉妹』家出した姉とよく食べる妹の話

第4話『親子』この喫茶店で働く妊婦の話

 

『このウソがばれないうちに』(2017年3月14日発行)は次の4編が収録されています。

第1話『親友』22年前に亡くなった親友に会いに行く男の話

第2話『親子』母親の葬儀に出られなかった息子の話

第3話『恋人』結婚できなかった恋人に会いに行く男の話

第4話『夫婦』妻にプレゼントを渡せなかった老刑事の話

 

この2冊で8回泣けます。とは言えそんなに「お涙頂戴」的なストーリーではなく、比較的淡々と物語が進行します。過去や未来に移動しても現実は変わらないのですが、何より変わるのは人の気持ちです。誤解が解けたり、心が成長したり、心構えや覚悟ができたり。

この8編を通して少しずつ喫茶店の由来や働く人たちの関係や謎が紐解かれていきます。また、過去にこの喫茶店でタイムトリップをした人たちのその後もサイドストーリーとして語られているので、やはりバラバラではなく順番にお話を読んでいくのがより楽しめると思います。

人間、生きていれば心残りや後悔の一つや二つあるものですが、時にそれらは重く心を圧迫し、今後生きていく気力を失うこともあります。当シリーズはそうした心の重しを取り上げ、過去に戻ったり、未来に行ったりすることで、現実を変えられなくても心の整理をする過程を深刻になり過ぎずに描き、かすかな希望を感じさせる物語です。作者の視点が真摯で優しいと感じました。

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