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新田次郎「芙蓉の人」

2020年11月16日 | な行の作家


文春文庫
2014年6月 新装版第1刷
2018年10月 第2刷
283頁

日本最高峰、標高3776mの富士山
明治28年、芙蓉峰とも呼ばれるこの最高峰で山頂に私設気象観測所を作りひと冬籠っての観測に向かった民間人・野中到
「一人であれば夫は必ず死ぬであろう」と確信した妻の千代子は、夫と共に山頂に籠るため、その計画を周囲に隠し、あらゆる方策を尽くして遂に決行
前人未到の真冬の富士山頂で寒さと高山病に苦しみながら夫唱婦随の観測が始まりました


明治とはいえ、嫁は家を守るものとされた時代によくここまでやり遂げたものです
女性の社会進出や平等云々以前に、夫への愛情、尊敬に裏打ちされた千代子の信念、気概、勇気、忍耐には頭が下がります

資料収集や綿密な取材をもとに書き上げられた小説ですが、野田千代子の伝記といっても良いのではないでしょうか

新田さんのあとがきより
偉大な日本女性の名を挙げよと云われたら野中千代子の名を挙げるだろう
野中千代子は明治の女の代表であった
新しい日本を背負って立つ健気な女性であった
封建社会の殻を破って、日本女性此処にありと、その存在を世界に示した最初の女性だった


千代子は富士登山の体力をつけるため、実家のある福岡県での準備期間中に用人だった大坪源造に山歩きの教えを乞うて何度も佐賀県との県境に位置する背振山(1055m)に登ります
源造が千代子に「山へ登るのも平地を歩くのも、要するに足と呼吸をどう合わせるかということで、そのコツが分かりさえすれば、もうどこへ行っても大丈夫です」と語る件に大いに納得
ウォーキングでへばってきたと感じたらこの言葉を思い出して調子を整えたいと思います

2014年にNHKでドラマ化(主演・松下奈緒)されているようです
探して観てみましょう


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