文藝春秋
2020年2月 第1刷発行
423頁
江戸が東京に変わる時代
佐賀の下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、恩師ジョサイア・コンドルを蹴落としてでも日本人建築家による首都作りを目指した男・辰野金吾の一代記です
金吾が設計した日本銀行本店が完成し、次は東京駅の設計を目指す金吾が同郷で同じように建築の道に進んだ曾禰に語る言葉
「私たちの世代の人生というのは、ひょっとしたら、日本史のなかでも特別なのかもしれんなぁ。封建の水と開化の水をともども浴びる。」
この時代には働き方改革なんてものは存在せず、誰も彼もが遮二無二働き、そのおかげで日本の近代化は一気に進みました
戦後もそうでしたが、国の発展は国民の犠牲のうえに成り立つものなのでしょうかねぇ
東京駅完成後、金吾が目指したのは国会議事堂の設計
スペイン風邪で最期を迎える日も「議事堂、議事堂」と言っていた金吾
調べたら国会議事堂は何度も建設案が浮かんでは消えるなどあって設計した人物をはっきり決められないとか
金吾が元気で議事堂の設計に携わっていたら、私たちが目にしている国会議事堂とは全く違うデザインになっていたかもしれませんね
病床の金吾の元に集まった長女・須磨子と長男・隆が、父は本当に建築という仕事が好きだったろうか、という話題から、それを金吾に質問したら、きっとこんな答えが返ってくるのではないか、
「仕事というのは、好きか嫌いかで選ぶものではない。興味があるかどうかでもない。国家がそれを必要としているか否で決めるものである。国家が必要とし、なおかつ誰もが手を出したがらぬものであれば、それこそ身を捧げるに値する。男子の本懐きわまれり。言い換えるなら「人が仕事を選ぶのではなく、国が人をえらぶのである」
と笑い合います
金吾には好きか嫌いかで仕事を選ぶなど軽薄極まりないことだったのです
そして、好き嫌いでフランス文学という仕事を選んだ隆は、それは個人の差ではなく世代の差なのではないか、と考えるのでした
金吾が設計した近代国家を象徴する建物は改修を重ねながら日本銀行本店、東京駅をはじめ日本各地に残っています
生涯に200件以上の作品を建てたそうです
本当に熱い人だったのですね
大河ドラマの主人公にどうでしょう?
日銀本店を上空からみると『円』のかたちをしているのは、意識したわけではなく、採光、人の動線、空間効率、美的効果などを総合的に判断した結果、たまたま、とのこと
以前から見学コースに参加したいと思っているのですが見学できるのは平日のみなんですよねぇ
何とか都合をつけて行きたいです
門井さんの本は前に前にと進める推進力があって読み易く面白いですよね。
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/23367771.html
ご紹介。
明治建築界の三大巨匠は辰野金吾と片山東熊と妻木頼黄。その妻木を主人公にした木内昇さんの『剛心』という作品があり、こちらも面白いですよ。
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/27706460.html
私もこれ面白く読みました。
そうそう、ドラマにしてもらいたい。
上にtodoさんがいらっしゃるけれど、「剛心」も読みました。
お薦めの「剛心」も( ..)φメモしました。
本書だと妻木という人物に魅力を感じないのですが、視点を変えて読んでみたいと思いました。
興味深い内容でした。
ドラマ化してほしいですね~。下級武士出身、才があって貪欲、アクが強くて粘り強い、これは菅田くんにピッタリだ~と思ってます(笑)。
https://blog.goo.ne.jp/mysketchbook/e/8801b8cf37a2af926f35993d560fcc69
日本に熱気があふれていた時代、庶民の暮らしはさておき、興味深いですよね。