キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

砂塵

2020年11月15日 | 二次創作・短文
 ここはどこだ。見覚えのある砂漠ではない。と、言うより、広大な砂漠に見覚えなどない。陽を避けられる場所、食料と水の確保をしなければ。
 過酷な場所の地下に拠点を据えがちな敵と戦っている。転移装置の誤作動が原因なら、この近くに敵の拠点があるのかもしれない。
 手際の良い部下が、手持ちの道具で簡易テントを作った。行動が早い。
「ブリザーの空撃ちでもしますか?」
 自分に使えない魔法。ありがたい。ちょっとだけ優越感を隠し切れてないのが何だかかわいい。ブリザーが使えるなら水は確保できる。本当にありがたい。
「テントの方に」
 日差しはマントをフード代わりにすれば、多少はしのげる。熱いのは平気な方だから、余力があるうちに周りの様子を見たい。
「テントの方は交代制なので」
 なるほど。本当に行動が早い。
 簡易テントに押し込められた彼らの主は、非常事態にも淡々と指示を飛ばすし、ついてきたこちらに気遣う余裕もある。ただし、この暑さではテントに押し込められたが最後、夜になって冷えてくるまで外に出してもらえないだろう。交代制のブリザー係まで配備されている。
 人気がない割に、空を飛ぶ魔獣の姿が見える。こちらに気づかなければ、やり過ごしてもいい。
 ともあれ、魔獣がいるということは、生き物はいる。十中八九食べるものはあるということだ。できれば場所の確定と帰り道の方向。
 見渡す限りに砂、砂、砂。見える距離に高い場所がない。
 魔獣が飛んできた方向に進んでみることにした。
 沈む場所はないか小石を投げてから進み、拾って進む。
 しばらく進むと、ようやく高低差のある場所が見えた。遺跡めいた建物と、その向こうに海。海なら魚がいるだろう。
「何用だ」
 不意に声が聞こえた。用事はない、帰りたい。と言ったらそれきりだった。帰り道を教えてくれるわけでもないようだ。
 ここはどこだ。どこでも良い気がしてきた。
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