政府の年金記録問題特別委員会(磯村元史函館大学客員教授)は17日、誰のものか分からない5000万件にものぼる年金記録のうち、いまだに2212万件が不明であるにもかかわらず、「これ以上は本人の申し出と記憶などをもとに調査していく方法しかない」として政府の責任による解明を事実上打ち切る報告書をまとめました。
年金記録問題は2007年に大きな問題となり、安倍首相は第一次内閣当時、「最後の1人まで調べ、正しく年金を払う」と繰り返し断言しました。報告書はこの公約を投げ捨てて幕引きを図ろうとするもので、厳しい批判は免れません。
これまで解明された年金記録は2983万件(2013年9月時点)。うち本人の記録に統合されたのは1783万件、1358万人にとどまっています。
解明中または解明が必要な記録は2112万件(41%)、そのうち手がかりもない記録は927万件も残されています。このほかオンライン化される前の紙台帳記録(6億件)との照合も済んでいません。
年金記録問題は、知りながら放置してきた歴代政権と厚労省などの責任です。記録解明には専門知識と労力が必要なのに、年金記録を管理してきた旧社会保険庁を自公、民主両政権が解体・民営化して、専門の職員など1万人も削減したことが解明を遅らせる大きな要因になっています。
報告書はこうした点にはまったくふれず、今後の対策として「人の質と量の不足がある」などと無責任な意見をあげています。