文部科学省が10年ぶりに実施した2016年度の公立小中学校教員の勤務実態調査で、中学校教諭の約6割、小学校教諭の約3割が週60時間以上勤務し、厚生労働省が過労死ラインとしている月80時間以上の残業をしていることがわかりました。教員の多忙化の解消は待ったなしの課題です。
教員を抜本的に増やし
調査によると平日1日あたりの勤務時間は小学校教諭で前回調査から43分増の11時間15分、中学校教諭で同32分増の11時間32分です。管理職では副校長・教頭が小中学校とも12時間を超えています。
多数の教員が過労死ラインをこえる勤務を強いられている現状は異常です。病気休職者は年間約8000人、うち約5000人がうつ病などの精神疾患です。過労死や過労自殺もたびたび起きています。多くの教員が健康を害し、命を脅かされるほど働かされている現状はこれ以上放置できません。
教員の長時間労働は子どもたちの教育にも深刻な影響を及ぼしています。激務に追われていて、子どもの話にじっくり耳を傾けることや授業の準備もままならない、勉強の遅れている子に丁寧に教える時間がない―。長時間労働は子どもたち一人ひとりに心を寄せる教育の重大な妨げです。
国と自治体は教員の生命・健康のためにも、子どもの教育のためにも、直ちに長時間労働を解消する責任があります。
いま何よりも必要なのは、教員の数を大幅に増やすことです。ところが安倍晋三政権は35人学級を法律上、小学校1年生でストップしたままです。近年は少子化に伴う「自然減」以上に教員を減らしてきました。政策を転換し、35人学級の完全実施、教職員定数の抜本的改善を急ぐべきです。
教員の勤務時間が長くなっている大きな背景の一つに安倍政権の「教育改革」があります。
08年に改定された学習指導要領では授業時間が増やされ、「学力向上」の名のもとに全国学力テストの点数を競わせるための繰り返し学習などがはびこり、教員も子どもも疲弊しています。にもかかわらず文科省は今年の指導要領改定でさらに授業時間を増やそうとしています。教員への管理を強めるため、詳細な授業計画の提出や書類作成など、子どもの教育に直接関係のない仕事が強いられています。競争と管理で教員と子どもを追い込む政策をやめるべきです。
中学校では土日の部活動指導の時間が1日あたり2時間10分で、06年度調査に比べ倍増しています。負担解消を求める教員の声が広がり、文科省は今年1月、休養日を設定するよう求める通知を出しました。一歩前進ですが、より根本的な解決が求められています。
時間外勤務に歯止めを
公立学校の教員は法令で、特別な場合を除き時間外勤務を命じることが禁じられ、時間外勤務手当を支給しないと定められています。しかし実際は「自発的に勤務する」とされ、残業手当なしに長時間の時間外勤務を強いられています。法改正などで長時間労働に歯止めをかけることが必要です。
教員が余裕をもって生き生きと働くことは、とりもなおさず子どもたちが豊かに成長できる条件をつくることになります。広範な人々の運動で、教員の長時間労働の解決を目指しましょう。