高校生「第一歩を踏み出せた」
萩生田光一文科相は1日の閣議後の記者会見で、2020年4月の大学入試への英語民間試験の導入について、延期すると表明しました。同試験をめぐっては、家庭の経済力や居住地で格差が生じるとの懸念が現役高校生や幅広い教育関係者から噴出。野党は共同で導入延期法案を衆院に提出し、日本共産党の畑野君枝議員が10月30日の衆院文部科学委員会で撤回を要求。野党は一致して導入中止を求めていました。
導入延期を受け、延期を求めて文科省前などで声を上げてきた高校生が1日夕に国会を訪れ、野党議員と報告集会を開催。高校2年の男子生徒は「声をあげたことが初めて実る経験をした。日本では決まったことは仕方がないと受け入れることが多いが、おかしいと声をあげたことに応援・賛同してくださる方が増え、改悪を止める第一歩を踏み出せたことに感謝します」と発言。高校1年の女子生徒も、延期の知らせが学校で話題になったとし「今まで声を上げても何も変わらないと思っていた。でも、この問題を通じて、声を上げる人がいるから変わるんだと思えた」と語りました。
萩生田氏は10月24日のBS番組で、格差が生じるとの懸念に対し「自分の身の丈に合わせて頑張って」と発言。格差を容認する姿勢に厳しい批判があがっていました。
萩生田氏は1日の会見で、4月からの導入に固執してきたこれまでの態度から一転。「現時点で、経済的な状況や居住地域にかかわらず等しく安心して試験を受けられるような配慮など、文部科学大臣として自信をもって受験生にお薦めできるシステムにはなっていない」と述べ、深刻な構造的欠陥があることを認めました。
一方、「(導入延期に)私の発言が直接影響したということではない」とし、自身の責任は否定しました。24年度実施に向け、文科省に新たな検討会を立ち上げ、1年をめどに結論を出すとしています。
報告集会で高校2年の男子生徒は「経済・地域格差をなくしていくのが政府の姿勢ではないか」と批判。別の男子生徒は、「延期だけではいまの中学生が犠牲になってしまう。そこを変えていくために、今から声をあげていきたい」と語りました。
「きっぱりやめるべきだ」
英語民間試験 笠井政策委員長が会見
日本共産党の笠井亮政策委員長は1日、国会内で記者会見し、萩生田光一文科相が同日、大学入学共通テストへの英語民間試験導入の延期を発表したことをうけ、英語民間試験の導入は、延期だけではなく、きっぱりとやめるべきだと主張しました。
笠井氏は、導入中止を求める署名活動など、高校生や保護者らの運動、野党による「延期法案」の提出と論戦を紹介。「市民と野党が力をあわせれば政治は変えられるという事態が進んでいる」と語りました。
その上で、「地域格差や経済格差など多くの問題点が指摘されている民間試験の導入は延期では済まされない」と述べ、「民間試験の導入そのものをやめるべきだ」と強調しました。
さらに、教育の機会均等を否定する萩生田氏は「文科相として最もふさわしくない。大臣を辞めるべきだ」と強く主張しました。
「新共通テスト完全中止を」
高校生らが次々と訴え
― 公平・公正な入試求め集会
「英語民間試験の延期を求める会」と「入試改革を求める会」が1日、野党とともに国会内で開いた集会には、13人の高校生が参加し、「英語民間テストの延期だけではなく、50万人の受験生を犠牲にする新共通テストは完全中止を」などと訴えました。
今年初夏に自分が受ける入試制度の深刻な問題点に気づき、情報を集め、文科省前の抗議活動にも参加してきたという高校2年生の男子生徒は、「声を上げたことが実った。感謝しています」と述べると同時に、「数学と国語の記述式で問題は残っています。公平性が保たれません。新共通テストは中止してほしい」と訴えました。
高校2年生が主催する「大学入学共通テストから学生を守る会」からも現役生3人が発言。1週間で4万人を超える署名が集まっていると紹介。高校2年の男子生徒は「アルバイトが採点する記述式では公平性は保てない。延期するだけではなく、完全中止も辞さない構えで考えてほしい」と訴えました。
「入試改革を求める会」の大内裕和・中京大学教授は集会に先立って、同会の「新共通テストの2020年度からの実施延期を求める緊急声明」とそれに賛同する18団体、744人分の署名を文科相あてに提出したことを報告しました。
大内氏は、「萩生田氏の“身の丈”発言は、新共通テストの問題の本質です。不利な立場の者に責任を押し付ける自己責任論です。英語試験延期で収束とはさせず、教育の民営化の問題点を議論しながら、公正・公平な入試を求めます」と語りました。