安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ知人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に同学園・岡山理科大学の獣医学部を新設する計画について、内閣府が文部科学省に「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っている」などと伝えたとする一連の内部文書の内容が17日、明らかになりました。
複数の文書のうち一部には、2016年10月に作成されたとみられる日付や、「加計学園」と具体名が記されたものがあります。官邸幹部、内閣府、文科省、農林水産省などが連絡・調整を取り合ったとみられる内容が、一部実名入りで箇条書きされています。
「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題する文書には、「平成30年(18年)4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と記載されています。さらに「これは官邸の最高レベルが言っていること」としています。
別の「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という題名の文書には、「設置の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれています。
また、「大臣ご指示事項」とされる文書では、麻生副総理など「獣医学部新設に強く反対している議員がいる」としています。
同学園の獣医学部新設計画は、今治市から約37億円の市有地(16・8ヘクタール)の無償提供、設置経費の補助金計64億円などが交付される予定です。
獣医学部の新設には、文科省や農水省が抑制する方針をとっていて、日本獣医師会も「特区」での新設に反対の声明をだしていました。ところが、16年11月、政府は「国家戦略特別区域諮問会議」で、52年ぶりとなる「獣医学部の新設」についての制度改正を決定。17年1月には、内閣府と文科省が獣医学部の認可申請を受け付ける特例措置を告示しました。申請は加計学園の1件のみでした。現在、認可について文科省の大学設置・学校法人審議会で審査が進められています。
「大臣ご指示事項」とされる文書では、冒頭に「内閣府に感触を確認してほしい」として、「大学として教員確保や施設設置等の設置認可に必要な準備が整わないのではないか」と、18年4月の開学は難しいとの見方を示しています。