庁舎前警備 猛暑時は屋内実施に
猛暑続きの近年、熱中症による死亡労働災害があとを絶たず、過酷な屋外労働での対策が急がれています。労働安全衛生を所管する厚生労働省では、猛暑時には庁舎前での警備業務を屋内で実施するようになりました。
「厚生労働省では、警備会社に委託して入館時の警備が炎天下でおこなわれていました。あまりに過酷なため改善を求め、ようやく実現しました」
こう話すのは全労働省労働組合(全労働)の河村直樹副委員長です。
危険な環境
厚労省の調査によれば、職場における熱中症による死亡者は2013年に30人を数え、10年の47人に次ぐ多さです。過去4年間を業種別でみると建設業が44人、製造業が20人、農業と警備業が9人ずつでした。
官民問わず入り口での警備は多くの職場で行われていますが、中央省庁も含め、炎天下の危険な環境での警備が多くあります。厚労省でも、直射日光と照り返しで猛烈な暑さとなっていました。
全労働は昨年8月、警備員の立つ場所で環境を測定。午前11時の時点でアスファルトが高温になり気温49・4度に達する日もありました。
厚労省や環境省は、熱中症を防止するため「暑さ指数(WBGT値)」の活用を呼びかけています。気温と湿度を組み合わせ、熱中症の危険度を15から44まで指数化したもの。「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階に分類します。当時この指数は38、安静にしないと危険というレベルでした。
厚労省は「職場における熱中症予防対策マニュアル」を公表して対策を呼びかけています。そこでは、「直射日光並びに壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設ける」よう求めています。
ところが、庁舎前の警備位置にはこうした対策は取られていませんでした。同時刻に街路樹の下で測定したところ温度で15度、指数で10も低く、日よけ効果の大きさは明らかとなりました。
対策広めて
全労働は、厚労省に抜本的な対策を求めました。警備員の安全衛生に責任をもつのは、使用者である警備会社です。しかし、警備業の特徴として、独自に警備の場所を変更したり、日よけを設置したりすることは難しく、発注者である厚労省の協力が欠かせないからです。
全労働は、警備位置を室内にするか、パラソルなどの日よけを設置すること、すぐ手が届く場所に冷たい水や塩分補強ができるあめを用意することなどを繰り返し求めました。
そして今年、WBGT値を警備の位置で常に測定し、一定の高さに達したら庁舎内に警備位置を移すようになりました。
河村さんは言います。「厚労省では熱中症の危険性は低下しましたが、まだ多くの労働者が炎天下の警備業務に就いています。仕事が原因で命を落とすようなことはあってはなりません。環境を測定しながら、直射日光を遮り、水分や塩分を補給する対策を広めてほしいと思います」