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「殺し殺される危険」現実に ― 戦後史に汚点残すな

2016-10-04 | 安保法制=戦争法を廃止にするまで

南スーダンPKO任務拡大

 3日の衆院予算委員会で日本共産党の笠井亮、赤嶺政賢両議員が質問に立ち、南スーダンPKO(国連平和維持活動)での自衛隊の任務拡大、沖縄県東村高江での米軍オスプレイパッド(着陸帯)建設、東京・築地市場の豊洲移転問題で安倍政権を追及しました。


 全面的な運用段階に入った戦争法=安保法制。笠井亮議員は防衛省提出の内部資料を示し、南スーダンPKOで自衛隊が市街地での戦闘を想定した全隊員への「至近距離射撃訓練」まで提起していたことを告発。「戦後71年、一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺さなかった戦後史に重大な汚点を残してはならない」と述べ、ただちに自衛隊を南スーダンPKOから撤退させるよう主張しました。

訓練内容――陸自研究本部「至近距離射撃訓練」を提案

 安倍晋三首相は、自衛隊幹部への訓示(9月12日)で「今こそ、実行の時だ」と述べ、戦争法の全面運用を宣言。稲田朋美防衛相はすでに、今年11月に南スーダンPKOに派遣する予定の自衛隊部隊に対して「駆け付け警護」「宿営地共同防護」に関する実動訓練を開始したことを明らかにしています。

 笠井氏は、河野克俊統合幕僚長が「武器使用基準等を徹底的に教育する」などと強調していることもあげ、訓練内容、新しい武器使用基準を明らかにするよう迫りました。

 ところが、稲田防衛相は「手の内を知らせることにもなる」と答弁を拒否しました。

 笠井氏は「すべて国会と国民に隠してことを進めようとしていることは重大だ」と批判。そのうえで、「現在行われている訓練の一端をうかがわせる資料がある」として、陸上自衛隊研究本部が統合幕僚長宛てに作成した2014年の南スーダン派遣部隊に関わる内部文書「教訓要報」(図)を示しました。

 内部文書は、2013年末から翌年明けにかけて自衛隊宿営地のある南スーダンの首都ジュバで発生した武力衝突を受けて、自衛隊のPKO活動の業務内容や教育事項についての認識共有を目的にまとめられたもの。そこには、市街地などの至近距離で敵と遭遇することを想定し、「全隊員による個人携行火器の実弾射撃(至近距離射撃)実施」を明記。「車上」「夜間」「遮蔽(しゃへい)」「彼我の識別」射撃など、近接戦闘を想定した訓練内容も盛り込まれていました。

 笠井氏は、ジブチに派遣されていた中央即応連隊の2等陸曹が「至近距離射撃訓練」について「判断を間違えれば命にかかわる」「正直、一番難しいもの」とリアルに証言していることをあげ、「いま実施中の訓練ではもっと過酷な射撃訓練が行われているのではないか」と、その危険性を追及しました。

事態緊迫――「命を守るために撃て」派遣隊長が証言

 内部文書にはさらに、「緊急撤収計画」が決裁されるなど緊迫した状況も明記されています。

 笠井氏は、2014年1月5日に宿営地のすぐそばで発砲事件が発生し、「全隊員が防弾チョッキおよび鉄帽を着用するとともに、隊長が警備強化命令を下した」と記されていることを指摘するとともに、提出された命令書の中身はすべて黒塗りだとただしました。

 稲田防衛相は「自衛隊部隊、要員の安全確保に直接かかわる」と答弁を拒否。笠井氏は、当時の現地派遣隊長だった井川賢一氏が「全隊員に防弾チョッキの着用、武器、弾薬の携行を命令し、『各自あるいは部隊の判断で、命を守るために撃て』と命じた」と証言していることをあげ、「そうした命令を出すほど現地の事態が緊迫していたということだ」と批判しました。

より深刻な事態――「(戦闘)再燃も」統合幕僚長

 笠井氏は「現在の南スーダン情勢は、当時と比べてより深刻だ」と指摘。今年7月にジュバで発生した戦闘のあと、南スーダン政府と反政府勢力が「敵対行為の停止」命令をしただけで「停戦合意」はないこと、河野統合幕僚長も「今後どうなるか、(戦闘が)再燃する可能性も否定できない」と述べていることをあげ、「PKO参加5原則は実態としても総崩れだ。自衛隊が南スーダンで活動を継続することは許されない」と迫りました。

 安倍首相は「PKO法上の武力紛争が新たに発生したとは考えていない」と、戦争法発動ありきで実態を直視しようとしない姿勢をあらわにしました。

 笠井氏は、南スーダンでは政府軍に多くの少年兵まで駆り出されていることを指摘。戦争法の発動は中止し、「日本の貢献は、憲法9条に立った非軍事の人道支援、民生支援を抜本強化する方向に転換すべきだ」と強調しました。

写真

(写真)陸上自衛隊研究本部が作成した内部文書「教訓要報」


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