安倍晋三政権が2015年9月19日、憲法の平和主義と立憲主義を乱暴に破壊し、安保法制=戦争法の成立を強行してから2年です。戦争法は、海外での米軍の戦争に自衛隊が参戦し、武力の行使を可能にする違憲の法制です。北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射の暴挙を繰り返し、世界と地域の重大な脅威になっている中、戦争法に基づく「戦争する国」づくりの危険が一層明らかになっています。
国民が知らないままに
首相は11日、自衛隊高級幹部への訓示で、第2次安倍政権発足後の安全保障政策を振り返り、「限定的な集団的自衛権の行使を含む平和安全法制(戦争法)を制定、新たな防衛協力ガイドラインを日米で合意した」とし、「わが国を取り巻く安全保障環境の現実を直視する時、これらの政策は全く間違っていなかった」と強調しました。
「新たな防衛協力ガイドライン」(15年4月)は集団的自衛権の行使など平時から戦時まで切れ目のない米軍と自衛隊との軍事協力の強化を取り決めたもので、その実効性を担保するのが戦争法です。
重大なのは、首相が「平和安全法制と新ガイドラインの下、日米の絆はかつてない強固なものとなっている。北朝鮮が挑発行為を繰り返す中、その脅威を抑止しなければならない」と述べ、日米共同で軍事的圧力をかける態勢の強化を表明したことです。
首相は具体例として、海上自衛隊のイージス艦などが日本海で史上初の米空母2隻との共同訓練を実施したことや航空自衛隊の戦闘機が米戦略爆撃機と共同訓練を繰り返していることを挙げました。
北朝鮮問題をめぐり米軍支援のための戦争法発動は、海自補給艦の米イージス艦への給油、海自護衛艦による米補給艦の「米艦防護」が報道で分かっています。首相が言及した米空母や戦略爆撃機との共同訓練などで自衛隊が防護任務に就いている可能性もあります。
政府は、戦争法に基づく米軍への補給や防護任務の実施状況を公表していません。万一、米朝間で軍事衝突が起これば、国民が知らないまま日本が自動参戦し、戦争の当事国になる恐れがあります。
実際、元内閣官房副長官補の柳沢協二氏も「敵国から襲われた米艦を守ることは、もはや戦闘」「相手は軍隊ですから、もしも自衛隊が武器を使用すれば、日本も戦争の当事国になります」(「朝日」8月22日付)と指摘しています。
戦争法による集団的自衛権行使の危険も明らかです。小野寺五典防衛相は8月10日の衆院安全保障委員会で、グアムへのミサイル発射が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たり得るとし、政府の解釈次第で無限定に発動されかねないことを示しました。柳沢氏は「グアムを守るための戦争を日本が自ら引き寄せることになる」(同)と批判しています。
戦争法は「全く間違っていなかった」どころか、日本を深刻な危機にさらすことは明白です。同法の廃止は緊急の課題です。
軍事衝突回避のために
北朝鮮問題をめぐる最大の危険は、米朝間の緊張の高まりの下、偶発的な事態などで軍事衝突が起き、周辺国や日本に波及することです。おびただしい犠牲をもたらす軍事衝突を回避するため、米朝直接対話の実現をはじめ平和的解決に力を尽くすことが必要です。