電通の企業体質を象徴
取り組んだら放すな殺されても放すな、目的完遂までは…。広告の鬼と呼ばれた元社長が65年前につくったという「鬼十訓」。それは今も電通社員の手帳に記されています
電通の企業体質を象徴する遺訓に過労自殺した高橋まつりさんの遺族側が問題視しています。じつは25年前にあった若手社員の過労自殺をめぐる裁判でも取り上げられました。くり返される悲劇は時代錯誤の心得と無関係ではありません
電通ではこの25年間で少なくとも3人の若手社員が過労死。違法な長時間労働で本社や支社が相次いで是正勧告を受けています。体も心もズタズタにされた高橋さんの死は、教訓どころか、社畜のように働かせる変わらぬ風土を示しています
ところが厚労省は、電通を「安心して働ける企業」だと認めていました。「労働時間短縮に取り組み、法令違反もない企業だ」と何度もお墨付き。正反対の実態がありながら、どうしてこんな認定ができるのか
批判に慌てた厚労相は取り消しも含め対処すると。しかしやるべきは、ずさんな認定基準の見直しとともに、人を奴隷のように扱ってきた体質にメスを入れることこそ。命を削る働かせ方を社会からなくすためにも。
電通には「戦略十訓」という行動規範もありました。“もっと使わせろ、捨てさせろ、ムダ遣いさせろ”。まさにルールなき資本主義を具現した標語。人を消費し、モノを浪費し、あとは野となれ山となれ。そんな企業をのさばらせるわけにはいきません。