安倍政権は2015年10月、20年10月の完成を目指して辺野古新基地の埋め立て本体工事着工を宣言しました。
しかし、実際はキャンプ・シュワブ陸上部の先端をわずかに整備した程度です。その後、翁長雄志知事による辺野古の埋め立て承認取り消しや訴訟に伴う「和解条項」で昨年3月から約10カ月、工事が停止。さらに県民のたたかいで工程は大幅に遅れています。
防衛省沖縄防衛局が提出した埋め立て申請書に示された主な本体工事のうち、現時点で着工されたものは一つもありません。(表)
より効果的な方法で
さらに、沖縄県や名護市には工事を阻止するさまざまな行政権限があります。
有力視されているのは、岩礁破砕の不許可に加え、埋め立て承認の「撤回」です。
仲井真弘多前知事が行った「埋め立て承認」を違法だと判断した翁長知事による「埋め立て承認の取り消し」は最高裁判決で退けられましたが、仲井真知事が承認したときと事情が変わったとして承認を「撤回」するという権限があります。
知事がこの権限を行使すればその瞬間からすべての工事は停止され、再び裁判闘争を経なければ再開できないものと見られます。
謝花(じゃはな)喜一郎知事公室長は市民団体の要請に「弁護団や学者の方々の意見を聞きながら、より効果的な方法で撤回をやる必要があり、検討している」と述べています。
翁長知事は1月20日のシンポジウムで「今後も新基地建設を進める上では、政府はいくつもの許認可を県や名護市に申請しなければならない。しっかり対処する中、撤回も含めて視野にいれながら、新辺野古基地は絶対に造らせない」と明言しています。
器物損壊容疑を想定
工事の遅れに焦る安倍政権は、新たな手段を用いて抗議行動を抑え込もうとしています。
防衛省沖縄防衛局は海上での抗議行動を排除するため、臨時制限区域を示すフロート(浮具)を海上に張りだしました。抗議船が進入できないようにするため、1年前には見られなかった支柱が取り付けられ、ロープや網が張り巡らされました。
海上保安庁は「壊したら器物損壊になる」と脅していますが、波や風の影響で支柱はしばしば破損しています。元県議の具志堅徹さんは、「自然環境を知らない人たちが考えたことだろう。何の意味もない海の破壊行為だ」と怒りをあらわにします。
防衛局はさらに、報道各社に対して臨時制限区域に立ち入らないよう求める警告文書を報道機関に送り付け、脅しをかけています。
ヘリ基地反対協の安次富(あしとみ)浩共同代表は、「器物損壊容疑での逮捕を想定するなど、報道の自由や表現の自由、行動の自由に制限をかけ、抵抗運動をつぶしにかかる弾圧だ」と憤ります。
また、米軍キャンプ・シュワブの陸上部では、埋め立て工事に必要な生コンクリートの製造施設建設も計画されています。シュワブゲート前の県民らの座り込みで、ミキサー車が入れず、生コンクリートが使いものにならなくなることを避けるためとみられます。
全国の連帯で阻止を
国の強引な工事の進め方に対し、新基地建設に反対する県民らは海上で船やカヌーで抗議行動を展開し、資材や工事車両の搬入口となっているシュワブゲート前で座り込み、たたかいを続けています。
抗議船「平和丸」船長でヘリ基地反対協の仲本興真事務局次長は、政府の一連の行為について「狙いは県民の新基地建設反対の意思をくじいてあきらめ感を起こすことだろう」と話します。一方で「毎日、必死で抗議行動が海と陸で行われている。政府のやり方は、新基地反対運動の広がりを恐れてのこと。全国の人たちと連帯して大きな運動を起こせば、工事を止められる。決してあきらめていないし、今こそ正念場。全国からもぜひ、現地に足を運んでほしい」と訴えます。
沖縄県統一連の中村司代表幹事は「安倍政権が何が何でも造るという姿勢を見せるほど、さらに県民の怒りはわいてくる。今が踏ん張りどき。知事の権限も行使されるこれからがヤマ場。さらに運動を強化していく」と決意を新たにしています。