2017年度予算案で文部科学省は、公立小中学校の教職員の加配定数(基礎定数とは別に毎年度予算で配置する教職員、16年度約6万4千人)の約3割を今後10年間で基礎定数とすることを打ち出しました。「今後10年で約5万人の定数減」という財務省の削減計画に対し、世論と運動、日本共産党の国会論戦ではね返しました。
新しく基礎定数とされるのは、発達障害などのある子どもに「通級指導」をする教員、外国人の子どもを指導する教員などです。今後、義務標準法を改正し、17年度は全体で基礎定数を473人増とします。
財務省は昨年11月の財政審建議で、教員5万人カットとともに、通級指導に「科学的根拠はない」とし、外部の支援員を充てればよいとしていました。
これに対し文科省は「事実誤認がある」と反論。過去10年で通級指導が必要な子どもが2・3倍に増え、日本語教育が必要な外国人の子どもは1・5倍となり、教育を行えるのは外部人材ではなく「専門的な研修を受けた教員」だと指摘しました。
日本共産党の吉良よし子議員は参院文教科学委員会でとりあげました。教員削減を求める財務省試算には誤りがあり、公立小中学校の児童生徒40人当たりの教員は0・04人しか増えていないと批判。「教育条件を良くするなら、教員定数を増やすことが必要だ」と求めました。松野博一文科相も「必要な教員定数の確保に全力で取り組む」と応じました(昨年11月17日)。
大平喜信議員は衆院文部科学委員会で、財務省が通級指導について「学力向上が認められない」と否定したことを批判しました。「通級指導は発達障害のある子どもに社会で生きる土台をはぐくむ場だ」とし、学力だけではかるべきではないと追及。大塚拓財務副大臣は「学力だけを考えているわけではない」と答えました(同25日)。
12月の2017年度予算案発表で財務省は、通級指導などにあたる教員を基礎定数として認めた理由について、「毎年度の加配では極めて不安定」と説明。基礎定数化によって教職員の安定的な採用や通級指導などが充実すると、予算案に明記されました。
一方で、教職員定数全体は少子化に伴う自然減などを合わせると3282人の減となります。文科省は概算要求では自然減を3100人と見込んでいましたが、財務省にいっそうの学校統廃合による定数削減を求められ、150校の統廃合でさらに1050人を減らされました。
教育関係者は少子化を、教育条件向上のチャンスとして35人以下学級の早期実現を求めています。教職員定数の抜本的な改善が必要です。