日本共産党の小池晃副委員長は10日放送のフジテレビ番組「新報道2001」に出演し、「朝日」が掲載した旧日本軍「慰安婦」問題の検証記事などをめぐって自民党の萩生田光一総裁特別補佐、日本維新の会の橋下徹代表(大阪市長)らと討論しました。小池氏は「朝日」報道をもって、「慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認め、謝罪した1993年の「河野洋平官房長官談話」の真実性はいささかも揺らぐことはないと強調しました。
「朝日」5、6両日付は、1980年代から取り上げてきた同紙の「慰安婦」問題の報道記事の検証記事を掲載。このなかで「慰安婦」を強制連行したとする吉田清治氏の証言を虚偽だと判断し、同氏を取り上げた記事を取り消しました。
これに対し維新の橋下氏は、「朝日」報道を攻撃するとともに、「アメリカ、イギリスだって民間業者を使って女性を性の対象にしていた。戦地ではフランス、ドイツも慰安所を持っていた」「日本だけを不当に侮辱するなと言い続けなければいけない」と発言。自民党の萩生田氏も「日本が組織的に女性たちを連れ去って慰安婦に仕立てたという話は違う」と述べました。
国際的に通用しない
これに対し、小池氏は反論しました。
小池 いまの議論は、国際的にはまったく通用しません。(「慰安婦」問題で問われている)強制性というのは、無理やり連れて来たかどうかという手段だけの問題ではない。甘言や人身売買などで、本人の意思に反して連れてくれば、それは強制です。
橋下さんは世界中やっていると言うけれど、軍の中枢も関与して女性を連れて来る、人数も、料金も含めて全部指示を出して、こんなことをやった国はナチス・ドイツと日本だけです。監禁し、毎日何十人もの兵士の相手をさせられる。そういうことに対して国際的に怒りが広がっているわけです。
例えば、アメリカの下院議会の決議にも、欧州議会の決議にも強制連行という言葉は出てきません。問題は、監禁して、兵士の相手をさせられる性奴隷制度であると。ここに女性の人権問題に対する怒り、世界の怒りがあるわけです。
小池氏は、吉田証言の問題について「信憑(しんぴょう)性がないことははっきりしている」と指摘した上で、その証言の取り消しによって強制性をすべて否定するような言動を批判しました。
金慶珠・東海大学准教授は、吉田証言だけが「慰安婦」問題の根拠になったのではなく、91年8月の元「慰安婦」金学順氏の証言に大きな意味があったと述べました。
一方、萩生田氏は「そもそも『慰安婦』の問題は人権の問題だという話のすりかえ(?どっちが?)はおかしい」と主張。小池氏は、軍の指示のもとに行われた性奴隷制度の問題だと強調しました。
橋下氏は「軍関与も大きな誤解だ」と述べ、性病検査や民間業者の取り締まりなど関与を矮小(わいしょう)化しました。
「性奴隷」だった
小池氏は「橋下さんは先ほど、性奴隷もなかったというわけですよね。この吉田証言が否定されたからといって全部なかったかのように言っているわけです。性奴隷じゃないんですか」と質問。橋下氏は「性奴隷だ」と認めながら、「性奴隷という言葉の問題で、もし日本のやったことが性奴隷だったら、世界各国も性奴隷を使っていた」と述べ、軍が直接指示・関与した「慰安婦」問題についての責任を免罪し続けました。
「河野談話」に関して、萩生田氏は「河野談話の根拠に、吉田証言はあった」と主張。小池氏は「河野談話の作成の際にヒアリングをやっています。対象は吉田氏だけでなく、(研究者の)吉見義明さん、秦郁彦さん、みんな意見を聞いている。吉見さん、秦さんは吉田証言を否定している人です。『河野談話』は吉田証言を採用していない」と指摘し、「河野談話」の真実性はいささかも損なわれることはないことを強調しました。
さらに小池氏は、「河野談話」の発表後、日本の八つの裁判所で元「慰安婦」35人が、強制的に「慰安婦」にされたと事実認定されていると紹介。「強制的に慰安婦にされたことが裁判所の判決で確定している」と強調しました。