政府は自衛隊の海外派兵を随時可能にする恒久法制定について検討に入りました。アフガン戦争やイラク戦争では、派兵に合わせて時限立法の特別措置法で対応してきましたが、自衛隊を迅速に派遣するには新法が必要と判断したものです。政府関係者が29日明らかにしました。来年の通常国会への提出を目指します。
これまでインド洋での米艦船への給油活動やイラクでの米軍輸送では、地域や期間を限定した特措法を制定。ただ、特措法は国会審議などに時間を要するため、自民党内では以前から、いつでもどこでも自衛隊を派兵できる恒久法を新たに制定すべきだとの声がありました。
安倍政権は7月の集団的自衛権行使を容認する「閣議決定」で、「現に戦闘行為を行っている現場」以外では米軍や多国籍軍に幅広い支援ができるとしています。安倍首相は、従来の「戦闘地域」での活動を可能とし戦闘現場近くでの支援を許容することで、自衛隊が戦闘に巻き込まれ武力行使に至る現実の危険が生じることを、日本共産党の追及に対し認めています。
日米両政府が10月に発表した防衛協力の指針(ガイドライン)再改定の「中間報告」でも、周辺事態という地理的概念を撤廃、米軍支援を世界規模に拡大するとしています。また、米国以外の国との軍事協力を進める方向も打ち出しています。
恒久法には、(1)国連平和維持活動(PKO)(2)米軍・多国籍軍支援のための自衛隊派兵の要件と活動内容―を盛り込む方針。派兵の国会承認については迅速に対応するため事後承認とする案が出ています。
一方、米軍・多国籍軍支援をめぐっては、政府は現在禁止されている武器・弾薬の提供や戦闘機への空中給油を解禁する方向です。戦闘に巻き込まれる危険を含め、他国の武力行使との「一体化」禁止のルールは完全に骨抜きとなります。
政府は1月召集の通常国会に安全保障法制整備の関連法案を一括提出する方針。与党は召集前に協議を開始することにしています。