陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の「日報」隠ぺい問題に関し、稲田朋美防衛相は28日の記者会見で、防衛省監察本部による特別防衛監察の結果を公表するとともに、安倍晋三首相に辞表を提出し、受理されたことを明らかにしました。内閣改造までは岸田文雄外相が防衛相を兼務します。国会での虚偽答弁や自衛隊を政治利用する発言など閣僚の資格が問われてきた稲田氏を、今日までかばってきた安倍首相の任命責任・続投責任は重大です。
監察報告書は、稲田氏が2月13日と15日、陸自側から日報の電子データを保管していたと報告された報道に関連して、稲田氏が両日、防衛省幹部らから日報に関する説明を受けたと認定。その際、陸自側から日報のデータ存在について「何らかの発言があった可能性は否定できない」としたものの、「防衛大臣により公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実もなかった」と稲田氏の関与を全面否定しました。
稲田氏は会見で、報道との食い違いを繰り返し指摘されましたが、「事実関係はすべて解明された」「報告を受けた事実はない」と居直りました。
2月13日、15日の会議でのやりとりについてあいまいなまま自らの関与を否定した稲田氏の辞任は、国会や国民に対する説明責任を放棄し、逃げたといわざるをえません。
報告書は、昨年7月と10月に行われた南スーダンPKОに関する情報公開請求に対して、陸自中央即応集団司令部が日報の存在を隠ぺいし、不開示決定としたことや、陸幕運用支援・情報部長が指揮システムの掲示板から削除したことについて、情報公開法5条(開示義務)や自衛隊法56条(職務遂行の義務)に違反すると認定。また、統幕の総括官が陸自に日報の電子データが保管されていることを知りながら、稲田氏への報告に1カ月を要したことについて、自衛隊法56条違反と認定しました。
黒江哲郎事務次官や岡部俊哉陸上幕僚長ら5人は停職、減給の懲戒処分としました。防衛省は28日、黒江次官を同日付で退職させ、後任に豊田硬官房長を充てる人事を発表。岡部陸幕長も8月8日付で退職します。
特別防衛監察結果のポイント
●南スーダンPKОに関する情報開示請求2件や日報管理で陸自・統幕担当者が不適切な対応
情報公開法5条、自衛隊法56条違反
●稲田防衛相は何らかの報告を受けた可能性あるが、非公表・隠ぺい了承の事実なし
●黒江事務次官、岡部陸幕長ら5人を処分
特別防衛監察 防衛省・自衛隊の不正などを発見し、改善することを任務とする防衛省の防衛監察本部が実施する監察のなかで、大臣の指示で行われるもの。今回のものを含めて4回実施。
稲田防衛相辞任 小池書記局長が会見
日本共産党の小池晃書記局長は28日、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽(いんぺい)問題で稲田朋美防衛相が同日辞任したことを受けて国会内で記者会見し、「これで一件落着にすることは絶対にできない。稲田氏は国会で国民の疑問、野党の疑問に答える責任がある。安倍晋三首相の任命責任、擁護してきた責任が厳しく問われる」と語りました。
辞任会見で稲田氏は、日報データの存在について書面での報告がなされたり、非公表の了承をした事実はなかったと説明しました。これについて小池氏は「自己弁護に終始する中身だ。陸上自衛隊にデータが残っていた報告を『口頭』で受けたこと、それを『黙認』したことは否定していない」と指摘しました。
稲田氏はまた「報告を受けた認識はない」とも釈明しましたが、小池氏は「どこかで聞いたセリフだ。森友学園の弁護士を務めていたことが発覚したときも、『虚偽の答弁をしたという認識はない』といったが、それと同じ印象を受けた」と述べました。
そのうえで、東京都議選で「防衛省、自衛隊」として自民党候補への支持を依頼した違法発言を含め、稲田氏を一貫して擁護してきた安倍首相の責任は極めて重大だと強調。「いよいよ臨時国会を開いて国政の諸課題について議論する必要がある。安倍首相は野党の開会要求に応え、国会を開く責任を果たすべきだ」と述べました。
小池氏は、国会で稲田氏が説明することに与党が消極的な姿勢を示していることについて、「辞任で幕引きを図るのは見え透いた隠蔽工作だ。首相の責任で稲田氏を国会に出席、説明させることが大事だ」と語りました。
また、「内閣総辞職」について問われ、「解散・総選挙が必要だ。安倍政治全体が問われている」と語りました。