政府は15日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に関し、今年3月に施行された安保法制=戦争法に基づく自衛隊初の任務として「駆け付け警護」を盛り込んだ実施計画の変更を閣議決定しました。従事する自衛隊は任務遂行に必要な武器使用が認められるため、南スーダンが「殺し、殺される」最初の例となる危険があります。
陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊(青森市)を基幹とする次期派遣部隊(第11次隊)の要員約350人は20日から順次現地に送られます。第10次隊と交代する12月12日に新任務が実施可能となる予定です。
政府は駆け付け警護について、(1)自衛隊から離れた場所で襲撃を受けている国連職員やNGO(非政府組織)関係者などの要請を受けた場合、武器を持って救出に向かう(2)他国軍の警護は想定されない―と説明。また、自衛隊の宿営地を他国部隊と連携して守る「共同防護」の任務も付与されます。
政府が発表した「新任務付与に関する基本的な考え方」(全文5面)によると、新任務の対象地域を首都のジュバとその周辺に限定するとしています。また、実施計画には(1)南スーダン政府の受け入れ同意が安定的に維持されている(2)紛争当事者間の停戦合意などPKO参加5原則が満たされていても、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合は「部隊を撤収する」―ことを加えました。
政府はこうした措置により自衛隊員の安全が確保されるとの立場です。しかし、南スーダンでは2013年12月に大統領派と副大統領派との内戦が勃発して以降、武力による対立が深刻になりました。今年7月にはジュバで大規模な戦闘が起こり、300人を超える死者が出るなど、治安が悪化。政府軍が国連施設を攻撃し、国連や援助関係者をレイプ、暴行する事態も発生しています。
自衛隊が新任務を実行すれば、政府軍との交戦も想定され、憲法が禁じる「海外での武力行使」につながる危険があります。
南スーダンから撤退を
― 新任務の付与を追及
日本共産党の赤嶺政賢議員は15日の衆院安全保障委員会で、政府が同日、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に安保法制に基づく新たな任務の付与を閣議決定した安倍政権を追及し、南スーダンからの自衛隊の撤退を求めました。
赤嶺氏は、他国軍とともに行う「宿営地共同防護」について質問。7月に首都ジュバで発生した大統領派と前副大統領派との軍事衝突で、国連施設の間近で戦車や砲撃ヘリが使用され、PKO要員2人と20人以上の住民が犠牲となったことなどをあげ、同様の事態が発生した場合の対応をただしました。
稲田朋美防衛相は「7月の武力衝突はかなり苛烈(かれつ)なものだった」と認める一方で、「自衛隊が対応可能な役割分担を、事前に(他国軍と)調整し訓練する」と述べました。
赤嶺氏は「応戦すれば、憲法が禁止した海外での武力行使そのものだ。自衛隊員が(紛争に)巻き込まれる結果は目に見えている」と批判しました。
「駆け付け警護」について、改定PKO法は、南スーダンの同意が活動期間を通じて「安定的に維持される」ことを「駆け付け警護」の実施要件としています。赤嶺氏は、国連の独立調査機関が1日に公表した報告書で、7月のジュバでの戦闘で大統領・前副大統領両派の和平合意が「崩壊した」と指摘していることを示しました。
稲田防衛相は、前副大統領派が支配地域を確立していないことなどをあげて、「受け入れ合意は成立している」との答弁を繰り返しました。
赤嶺氏は、国連が民族間の大量虐殺を防ぐための和解の取り組みを求めていることをあげ「政府は、和解に向けた外交努力や民生支援で積極的な役割を果たすべきだ」と強調しました。