大学生などの教育費負担を軽減するため、返済不要の給付制奨学金を求める世論が高まっています。この制度創設に消極的な姿勢を貫いてきた政府も、国民の声に押され、「給付型奨学金を来年度予算編成で実現」(安倍晋三首相)と述べました。これまで卒業後の借金となる貸与制奨学金しかなかった日本で、給付制が創設されれば、前進への一歩となります。問題は、スタートにふさわしく、どのような規模の制度にするかです。
創設にふさわしい規模で
日本は、世界的に見て大学が高学費でありながら、給付制奨学金がない特異な国となっています。学生の2人に1人が卒業時に奨学金返済のため平均300万円もの借金を背負い、社会人として出発しなければならない事態です。
「無利子と有利子あわせて月17万円もの奨学金を借りていて、返済額は800万円になる」「莫大(ばくだい)な返済を考えると不安」「学費が高すぎる。お金の心配なく学びたい」など多くの学生が高学費に苦しみ、奨学金の返済に不安を募らせています。卒業後、返済困難に陥ったり、返済のために結婚や出産をためらったりする若者もいます。
返済への不安から奨学金の利用を控え、学生の3人に1人は「アルバイトなしには学生生活が送れない」という厳しい状況です。
給付制奨学金の創設に向けた具体的内容は、現在、文部科学省内の「給付型奨学金制度検討チーム」で議論されていますが、詳細は明らかにされていません。「給付規模は7万5千人程度」という報道もありますが、事実であれば、きわめて限定的です。全学生の2%強の規模にしかならず、ほとんどの学生は対象外となります。
日本共産党は、少なくとも「月3万円を70万人」への給付制奨学金を創設し、さらに拡充することを提案しています。70万人は、全学生の約25%にあたり、奨学金を利用する学生の約半数をカバーできます。まず、そのくらいの規模で創設し、充実をはかっていくことこそ、学生の願いにこたえる道です。
経済協力開発機構(OECD)諸国では、アメリカで35%、学費無償のドイツで27%、フランスで35%の学生が給付制奨学金をうけています。日本と同様に高学費の韓国では、世論が高まるなか、2011年に給付制が創設され、現在、学生の36%にあたる約130万人にまで広がっています。
日本でもいま、「本物の奨学金を」と給付制の創設と拡充を求めて、学生、保護者、市民が声を上げています。大学の高学費を引き下げることとあわせて、給付制奨学金を創設し、国民の期待にこたえた規模と内容をもった制度として、スタートできるよう、ご一緒に力をあわせましょう。
返済の負担軽減も急務
来年度に導入予定の「所得連動型無利子奨学金」は、返済月額が一律の現在の制度と比べて、一定の改善もありますが、「収入ゼロでも月2千円返還」「有利子奨学金は対象外」「高齢まで返還が続く恐れがある」など多くの課題が残されており、抜本的な改善が必要です。
卒業し奨学金を返済している若者の負担軽減も急務です。返済が遅れるほど膨れ上がる延滞金の廃止、返還猶予期限の撤廃など、奨学金の返済が困難な若者を追いつめないためのセーフティーネットを拡充することが求められます。