日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県)で核燃料物質の点検作業中に5人の作業員が被ばくした問題で、原子力機構は7日、3人から内部被ばくが確認され、50代の男性作業員1人の肺から2万2000ベクレルのプルトニウム239などが検出されたと発表しました。
被ばく量に換算すると、今後50年間で最大12シーベルト、最初の1年間で1・2シーベルトに達するとしています。
5人全員に肺を中心に体内の放射性物質を検出する肺モニターによる測定を実施した結果、50代の作業員からはプルトニウム239のほか、アメリシウム241も220ベクレル検出されました。
他の作業員3人からアメリシウム241が130ベクレル、12ベクレル、8・5ベクレル検出されました。
原子力機構は、作業員にプルトニウムなどの体外への排出を促進する目的で薬剤を投与。放射線医学総合研究所(千葉県)に搬送し、詳細な検査を行うといいます。
原子力機構によれば、過去には再処理施設(茨城県東海村)で50年間で数十ミリシーベルトの内部被ばく事故がありましたが、今回はそれを上回り同機構での最悪の内部被ばく事故です。
「事故連鎖」の危険を直視せよ
― 原発の集中立地
関西電力は、先月の高浜原発4号機(福井県高浜市)に続き、3号機(同)を再稼働させました。全国で稼働した原発は、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)と合わせて3原発5基になりました。福井県では再稼働した高浜原発、夏以降に再稼働が狙われる関電大飯原発など原発が集中して立地されています。2011年3月の深刻な原発事故がなかったかのように、被災者や国民の思いを踏みにじり再稼働を加速させる安倍晋三政権の姿勢は重大です。
15基もある“過密地域”
今回、再稼働した高浜原発は若狭湾に面しています。若狭湾は、東日本大震災で大きな被害があった三陸海岸と同じリアス式海岸で津波に見舞われた歴史もあります。湾をぐるりと囲むように15基もの原発(廃炉予定も含む)が立つ、この一帯は、世界でも有数の“原発過密地域”です。15基のうち、規制委は再稼働した高浜3、4号機以外にも、同1、2号機、大飯原発3、4号機、美浜原発3号機を新規制基準のもとで「合格」させています。計7基もの原発を次々に動かすのはあまりに危険です。
原発1基の事故でも深刻な被害が生じますが、複数の原発が同時にあるいは連鎖的に事故になれば、その被害は計り知れません。しかし規制委の審査は、一つひとつの原発の重大事故対策しか対象にしていません。規制委の田中俊一委員長は国会で「集中立地」のリスクについて“新規につくる場合の潜在的リスク”しか認めませんでした。「集中立地」の危険は新規も再稼働も同じです。「住民の安全」との視点が完全に欠落しています。
実際、広範囲に地震・津波に見舞われた東京電力福島第1原発事故では、その危機に直面しました。この時、第1原発から約12キロメートル離れている福島第2原発の原子炉も冷却機能を失い、原子力緊急事態宣言が発令されました。第2への危機対応の際、第1の事故が大きな支障を与えた、と国会の事故調査委員会は報告しています。報告は、複数の原発が存在する地域に住む住民はより高いリスクの下に置かれている、とも指摘しています。
複数の原発で同時に事故が起きた場合、住民の避難も困難を極めますが、避難計画やその実効性も規制委の審査の対象外です。
原発再稼働に当たっての地元同意が道県と原発立地市町村のみに限られていることも問題です。高浜をはじめ、各地で避難計画が義務付けられている30キロ圏内の首長から反対の声が上がっています。
高浜原発は、燃料にウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を使うプルサーマル発電です。制御が利きにくいなど安全性が懸念され、使用済みMOX燃料の処理方法も決まっていないなど数々の問題を先送りしたままの再稼働です。道理がないことは明白です。
無責任な再稼働中止を
安倍政権は「世界一厳しい規制基準」などと持ち上げ、「合格」をもって次々と再稼働する電力事業者を後押ししています。しかし規制委は、新規制基準は「絶対的な安全性が確保できるわけではない」との立場です。こんな無責任なやり方で安全を置き去りにした再稼働は直ちに中止すべきです。