厚生労働省は3日の社会保障審議会年金部会で、年金財政の検証結果を公表しました。政府のいう「経済再生」が進んだ場合、現役の勤労者の手取り収入に対する年金の給付水準(所得代替率)は、将来も50%を確保できると試算しましたが、給付水準は今年度の62・7%から下がりつづけ、30年後にはどの試算でも50%ぎりぎりとなっています。
政府は2004年の年金改定で、所得代替率50%維持を明記し「100年安心」といいましたが、看板倒れの実態がいっそう明らかになりました。
現役収入の半分割れも
厚労省は、賃金の伸び率など条件が異なる八つのケースを試算。そのうち五つは、女性や高齢者の働き手が増える「高成長ケース」で、三つは「低成長ケース」。
現在のモデル夫婦の給付水準は、現役手取りの62・7%。年金財政を維持するには高成長を見込んでも、給付水準を2割程度下げて、50・6%~51・0%にしなければならないとしました。低成長では5割を切り、約30年後に国民年金の積立金がなくなり、給付水準は35~37%まで落ち込むとしています。
給付水準の切り下げは、現役世代の減少などを理由に年金の増額幅を賃金や物価の伸びよりも抑制する「マクロ経済スライド」を発動するためです。年金を自動的に削減する「マクロ経済スライド」の害悪を浮き彫りにしています。
試算もとに改悪ねらう
検証では厚生年金の世帯を標準にしていますが、国民年金受給者は給付水準の下げ幅が大きくなります。高成長でも3割近く減ることになり、基礎年金のみの人にとっては大打撃となります。
財政検証では、三つの制度改定を実施した場合を示しました。
第一は、基礎年金の保険料を支払う期間を今の40年から5年間延長する案。標準ケースの給付水準は6・5%増え、57・1%になるとしています。
第二は、厚生年金の適用拡大。週20時間以上働くパート労働者約220万人が加入すると、水準は0・5%増の51・1%。年収70万円以上の労働者全員1200万人が加入すると6・9%増の57・5%となります。
第三は、年金を自動的に減らす「マクロ経済スライド」をデフレ下でも発動する場合。0・4%から5%増になるとしています。
厚労省は今後、この試算をもとに法改定も含めた検討に乗り出す構えです。
これでは、際限のない負担増と給付削減の悪循環から抜け出すことはできず、生活苦と将来不安を広げるだけです。日本共産党は、
(1)年金削減を中止して「減らない年金」にして、無年金・低年金の解決に踏み出す
(2)全額国庫負担による最低保障年金の確立にすすむ―の2段階の抜本的改革を提案。
同時に、国民の所得を増やす経済改革で人間らしい雇用と賃金を確立して年金制度を支える道を掲げています。
年金の安全運用 逸脱
― 佐々木氏 積立金の株投資批判
日本共産党の佐々木憲昭議員は3日の衆院財務金融委員会で、国民の年金保険料でつくられた年金積立金を運用する独立行政法人が運用先を国債から株式に移行させようとしている問題を取り上げ、「安全運用」の原則から逸脱していると主張し、中止を求めました。
独立行政法人・年金積立金管理運用(GPIF)は約129兆円にのぼる国民の年金資金を管理・運用しています。運用先は国内債券が55%、株式は国内(17%)、外国(15%)合わせて32%などとなっています。今回、株式への運用を増やすことを狙っています。
佐々木氏は「年金の積立金は投資目的ではなく国民から預かったお金であり、運用は安全、確実が原則だ」と強調。安倍晋三首相が「運用の多様化」を唱え、「株への依存を高めることは、国民の財産に穴をあける危険を高めることになる」と警鐘を鳴らしました。
佐々木氏はさらに、最低保障年金部分の積み立ては株などへのリスク投資を避けるアメリカやカナダ、スウェーデン、オランダなどの運用例を示しながら、「日本のやり方は国際的に見ても特異だ」と指摘しました。
麻生太郎財務相は「専門家を中心に引き続きしっかりした検討が行われることに期待する」と述べるにとどまりました。