国会の公開原則崩す
自民、公明の与党は秘密保護法の年内施行に向け、秘密の運用をチェックするための「監視機関」(秘密会)を衆参両院に設置する国会法改定案を今週中にも審議を始め、今国会中の成立を狙っています。「秘密会」の常設は、公開を原則にしている国会のあり方を大きく変質させるものです。昨年末に国民の強い反対を押し切って成立が強行された秘密法が、「言論の府」へ侵食をはじめています。
与党案 今国会成立狙う
与党が提出した法案は、衆参それぞれに委員わずか8人で構成する「情報監視審査会」を設置。審議も会議録も原則非公開の「秘密会」の場で政府から秘密の提供を受け、中身をチェックするという骨格です。(図)
現行憲法の下で「秘密会」の開催はこれまで、議員の逮捕許諾など、委員会での特殊な案件に限られてきました。その上、「秘密会」であっても所属外議員の傍聴は禁止されてきていません。
しかし今回の法案は、秘密を扱う国会職員に対する身辺調査や、電波遮断のための会議室の防護措置、同席者の限定など、国会に完全な密室を設ける内容です。
国会議員の発言の自由も侵されます。憲法は院内での演説、討論などで責任が問われないとしていますが(51条)、与党案では「審査会」の外に漏らせば院内でも「除名」などの懲罰の対象。院外では、秘密法により懲役5年以下の罰則が科されます。
国会活動を大幅に制約しながら、「監視機関」の役割は全く期待できません。
米国や英国など各国議会が軍や情報機関の活動全体を監視しているのと異なり、「審査会」の対象は特定秘密の運用だけ。秘密文書を生み出す政府の活動そのものや、特定秘密以外の秘密は最初から対象外です。
そもそも国政調査権を行使して政府の秘密に迫った事例が少ないのは、多数を占める与党に政府を監視するという認識が乏しいからです。各会派の議席数に応じた8人の委員配分で「監視機関」をつくっても、少数会派の意見は排除され、お墨付きを与える機関となることは目に見えています。
秘密指定の是正権限
第三者機関になし
赤嶺議員が質問 政府認める
政府は4日、特定秘密の適否をチェックするため、内閣府への設置を検討している「第三者機関」について、不適切な秘密指定に対して是正を行わせる権限が法律上ないことを認めました。
同日の衆院内閣委員会で、是正の法的根拠をただした日本共産党の赤嶺政賢議員の質問に対し、北村博文内閣審議官は「(秘密)指定を取り消すような権限を付与するなら、別途法律上の根拠が必要だ」と述べ、秘密保護法に権限が明記されていないことを認めました。また、「あくまで是正を『求める』形を考えており、法律上の規定は必要ない」と述べ、新たな立法措置を否定しました。法的根拠がなければ、「第三者機関」が不適切な秘密の指定解除を求めても、秘密保有機関が応じる義務はありません。
さらに、森雅子担当相は「行政機関の長の判断により、特定秘密が提供されない場合はありうる」と答弁。「第三者機関」が秘密を閲覧できない可能性も認めました。
赤嶺氏は、秘密の閲覧も是正の担保も、すべて秘密保有機関の長の判断次第で、「第三者機関」といいながら「宙に浮いた議論だ」と批判しました。