国民や世界と矛盾激化
年初から続く安倍晋三首相や自民党幹部の発言から、解釈改憲に向けて安倍内閣が狙うスケジュールが見えてきました。今夏にも憲法9条の解釈を変え、歴代政府が禁止してきた集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をし、秋の臨時国会で、その具体化立法を推進する構えです。しかし改憲への暴走は広範な国民やアジア諸国との矛盾を激しくし、米国とのあつれきも引き起こすことは必至です。
解釈・明文両にらみ
「解釈の変更や改正に向けて国民的な議論をさらに深めていく」
安倍首相は6日の年頭会見で解釈改憲と明文改憲の両にらみで「戦争する国」づくりを推進する考えを表明しました。
自民党の石破茂幹事長も、集団的自衛権の行使容認に向け、「首相も私も(12年の自民党)総裁選で絶対やると言った」「(解釈改憲は)安倍内閣でしくじることは絶対にあってはならない」と発言(6日、BS番組)しました。
集団的自衛権とは、自国が攻撃を受けていないのに、密接な関係にある国への“攻撃”を口実に武力行使に踏み切ることを可能にするもの。「海外で戦争する国」づくりの要となっています。
この集団的自衛権行使の解禁を検討している首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」。同懇談会の報告書の提出時期について、菅義偉官房長官は「4月に提出してもらい、その後で与党内の調整に入る」(7日のBS番組)と明言。さらに国家安全保障を担当する礒崎陽輔首相補佐官は、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更について「(24日召集の通常)国会中にしっかりと決めたい」(12日のフジテレビ番組)と具体的に踏み込み、行使容認に必要な関連法案の整備についても「次の臨時国会以降に法案を出したい」と記者団に述べています。臨時国会を「安保国会」と位置づける方針(メディア関係者)です。
広く深いエネルギー
解釈改憲・明文改憲両にらみでの「戦争する国」づくりは、内外の激しい矛盾を引き起こさざるを得ません。
何より、昨年秘密保護法反対で示された、平和と民主主義を守る国民の広く深いエネルギーとの衝突です。
法案の成立後も違憲立法の「廃止」を求める世論と運動が拡大しています。その根本には、国民の知る権利、表現の自由など基本的人権の侵害への危惧とともに、日本版NSC(国家安全保障会議)の設置や集団的自衛権行使へ憲法解釈を変更する動きと一体であることをはじめ、「戦争する国」づくりへの厳しい批判があります。
また、共同通信の昨年末の世論調査では、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に反対は53・1%で、賛成の37・0%を大きく上回りました。石破氏は6日の番組で、「少なくとも世論調査で半分以上の人が『そうだね』というところまでもっていかないといけない」と述べざるをえませんでした。
また解釈改憲という手法には内閣法制局長官経験者や元政府高官からも批判の声が上がり、説明不能な自己破綻は深まっています。歴代政府が示してきた憲法解釈を自己否定するものだからです。
国際秩序への挑戦
安倍首相が昨年末に靖国参拝を強行したことで、戦後の国際秩序に正面から挑戦する歴史観をもった政府が「戦争する国」づくりを進めることへの批判は、中韓はじめ国際的に沸騰せざるをえません。
安倍首相の靖国参拝に、即座に「失望」を表明した米国は、集団的自衛権行使の容認を「歓迎」しつつも、「地域のいかなる特定の国を脅かすものであってはならない」(デンプシー米統合参謀本部議長)とクギをさしました。中国や韓国との緊張、対立を激化させる安倍首相の行動は、米国の戦略とのあつれきをも拡大させています。(