沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古への新基地建設問題で、県の第三者委員会が、前知事の埋め立て承認に「法律的瑕疵(かし)が認められる」とした報告書を翁長雄志知事に提出しました。翁長知事は報告書を「最大限尊重する」としており、前知事の承認を取り消せば、政府は新基地建設の法的根拠を失うことになります。政府は埋め立て工事を強行する姿勢を改めるべきです。
どの要件も「法的に瑕疵」
第三者委は、昨年11月の知事選で「あらゆる手法を駆使して新基地は造らせない」との公約を掲げ当選した翁長知事の下で設置されました。仲井真弘多前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認(2013年12月)手続きについて法律的な瑕疵がなかったかどうかを検証するためです。
仲井真前知事が行った埋め立て承認は、公有水面埋立法に基づくものです。報告書がまず同法の前提要件として問題にしたのは「埋め立ての必要性」についてです。
政府は、辺野古への新基地建設が普天間基地問題の「唯一の解決策」と繰り返しています。これに対し報告書は、「埋め立ての必要性」に「合理的な疑い」があるとし、なぜ辺野古の新基地が必要なのかという政府の説明は合理性に欠けるとしました。また、普天間基地「移設」の「必要性」から直ちに辺野古での埋め立ての「必要性」があるとした点に「審査の欠落がある」とし、前県政の審査は不十分だとしました。
普天間基地は、米海兵隊の航空基地です。最近も、アマコスト元駐日米大使が「(太平洋における米戦略にとって)沖縄に駐留する海兵隊が死活的に重要なものだとは私には思えません」(「朝日」6月23日付)と述べたように、米国内では沖縄の海兵隊不要論は少なくありません。政府が固執する海兵隊の「抑止力」論は全く説得力を持ちません。報告書が「埋め立ての必要性」について「要件を充足していると判断することはできず、法的に瑕疵がある」と結論付けたのは当然です。
公有水面埋立法は、埋め立て承認に必要な要件として▽埋め立てが環境保全に十分配慮されている▽環境保全に関する地方公共団体の法律に基づく計画に違反していない―ことなどを挙げています。
報告書はいずれの要件も「法的に瑕疵がある」と結論付けました。とりわけ、豊かな生物多様性を持つ辺野古の海についての現況や埋め立てによる影響を的確に把握したとは言い難く、保全措置が適正に講じられているとも言い難いと断じました。環境保全に関する県の計画に違反するかどうかも十分な審査がされなかった可能性を指摘しました。
建設ありきは許されない
仲井真前知事の埋め立て承認が、政府の不当な圧力の下、新基地建設ありきで行われたことは明らかです。政府は「わが国は法治国家であり、行政の継続という観点からも、既になされた承認に基づいて埋め立て工事は進めさせてもらう」(菅義偉官房長官)などとしていますが、絶対に許されません。
そもそも県民の圧倒的多数が反対する新基地建設に道理はありません。翁長知事が承認を取り消せば法的根拠もなくなります。建設作業の速やかな中止こそ、「法治国家」として取るべき行為です。