厚生労働省は7日の社会保障審議会・医療保険部会で、医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」について、70歳未満の年収570万円以上の人や70歳以上の一部高齢者の上限額を引き上げる案を示しました。70~74歳の窓口負担を1割から2割に引き上げるのと抱き合わせで自己負担の上限見直しを打ち出し、多くの世代で負担増となる内容です。
厚労省は3案を示しました。
いずれも70歳未満の年収770万円以上は、負担の月額上限を約15万円から約17万円以上に引き上げます(対象者1330万人)。年収570万~770万円未満についても上限を8万円から12万円に引き上げれば、負担増となるのは2780万人となります。
負担上限が現行8万円となっている年収210万~770万円未満では、370万円未満についてだけ6万円前後に引き下げます。(対象者は4060万人)
年収370万~570万円(上限8万円)と年収210万円未満(上限3万5千円)は上限を据え置きます。570万~770万円でも8万円に据え置くケースがあります。
一方、窓口負担が2割負担へ倍加となる70~74歳では、「現役並み」とされる年収570万円以上と、「一般所得」とされる年収310万~370万円の人について、約4万~2万円引き上げる案と、据え置く案を示しました。引き上げとなる層では窓口負担増と併せてダブルパンチとなります。
解説
抜本的な窓口負担軽減を
厚労省の「高額療養費」制度の見直し案は、高すぎる負担増にあえぐ国民の実態に応えたものとはいえません。負担増となる人は1330万~2780万人にのぼります。年収370万円以下の人は引き下げるとしていますが、それでも負担の月額限度額は約4万4000円から約6万2000円にもなります。
高額療養費制度は医療費の過重な自己負担軽減のためにあります。
「一定の所得がある人(世帯)から応分の負担をしてもらう」というのが政府の言い分ですが、現行制度のもとでさえ年収の6分の1が医療費に消える実態があります。医療費が家計を圧迫し、配偶者や子どもが病気になり一人で家計を支えながら看病をつづける人も少なくありません。
安心して医療を受けるために、これ以上の負担増は許されません。
国際的にみても異常に高い医療費窓口負担を見直し、抜本的に軽減することが求められます。