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きょうの潮流

2018-01-18 | コラム

「千の言葉よりも、こうした写真は人の心を動かすことができる」。ローマ法王が原爆直後の長崎の姿をきりとった一枚の意味を世界に問い直しています▼「焼き場に立つ少年」と名付けられた白黒の写真。口を真一文字に結んだ直立不動の10歳ぐらいの少年。背には眠ったように死んでいる弟がくくりつけられています。唇をかみしめ、じっと前を見つめる裸足(はだし)の少年からは涙も出ないほどの悲しみがひしひしと▼終戦の翌月に来日した米海兵隊の従軍カメラマン、ジョー・オダネルさんが写したものです。私用のカメラに収められた数々の光景は長い間トランクの中にしまわれていました。悪夢のような忌まわしい記憶を閉じ込めるために▼およそ半世紀ぶりに封印が解かれたきっかけは米国内で高まった反核運動でした。入市被爆の後遺症と原爆投下を正当化する人たちの非難とたたかいながら、オダネルさんは写真を世界に公開していきました▼日本で初めて展示会が開かれたのは26年前、盛岡市のキリスト教センターでした。教会の交流でオダネルさんと知り合った市内に住む山崎真さんが実現しました。大切に保管している山崎さんのもとには、今も展示や講演の依頼が各地から▼写真をカードにして配っているフランシスコ法王は裏に署名とともに「戦争が生み出したもの」との言葉を。戦争や核兵器の悲惨さを多くの人に伝えたい。亡くなったオダネルさんや法王のメッセージは自身の活動と重なる。80歳になる山崎さんの思いです。


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