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きょうの潮流

2018-02-12 | コラム

今日は何を食べようか、どうしたら学校の教科書を安く手に入れられるか、せめて日曜ぐらいは映画館に―。イタリアの小都市に生まれた少年の家族は日々の生活に頭を悩ませていました▼少年の母親は布地を寄せ集め、手作りで子どもの服を。「裕福な家の子の服にも見劣りしなかった。シンプルで控えめな、本質的なものを求めるぼくの好みも、子どもの頃のそんな経験から育まれているのかもしれない」▼自伝のなかで振り返っているのは、世界的なファッションブランドの創立者、ジョルジオ・アルマーニ(『帝王の美学』)です。ぜいたくは許されず、実生活からかけ離れた“偽物”にたいする嫌悪はこの頃から感じていたと▼明治時代から東京銀座にある公立の泰明(たいめい)小学校が、新年度からアルマーニの制服を採用したことが波紋をひろげています。一式8万円の価格はこれまでの2・5倍に。保護者からは苦情や困惑の声が上がっていますが、校長は「変えるつもりはない」▼高級ブランドに決めた理由として、銀座にある学校らしさや「服育」をもちだした校長。その教育方針にも首をひねりますが、親に負担をかけ、子どもの間に格差をもちこむことに思いが至らないのか▼いま教育の場で切実に現れている貧困。親や子を追い詰める格差。その現実をなきがごとく言い募り、大金持ちや株価ばかりに目がいく政権と発想は同じか。「見せかけの真実は見たくない」。簡素で本質的なものを追求したジョルジオ・アルマーニの言葉です。


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