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過労死まで自己責任 安倍「働き方改革」 月45時間 残業上限規制を

2017-02-02 | 人権・生存権・労働者の権利を守ろう

参院予算委 田村副委員長が追及

 「安倍内閣の『働き方改革』では、過労死も自己責任にされてしまう」―。日本共産党の田村智子副委員長は31日の参院予算委員会で、電通新入社員の高橋まつりさんの過労自殺事件に触れて安倍内閣の「働き方改革」を追及し、労働時間管理の徹底と上限規制を求めました。

 残業時間は、厚生労働大臣告示で月45時間などとされていますが、労使で「三六協定」を結べば際限なく延長できます。電通は、「三六協定」で残業上限を月70時間に設定。しかも、労働時間を自己申告制にして、高橋さんは月70時間以下になるよう過少申告させられていました。

 田村氏は「自己申告制は長時間労働の隠れみのになっている」と指摘。労働時間の適正把握を企業側に義務付けた厚労省の「4・6通達」(2001年)に反するとただしました。

 塩崎恭久厚労相は「通達があっても守られていないことに問題がある」と答弁。安倍晋三首相は「厚労省が今月、策定したガイドラインに基づいて監督指導の徹底をはかっていく」と答えました。

 田村氏は、安倍内閣が提出している「残業代ゼロ」法案(労働基準法改定案)に盛り込まれた「高度プロフェッショナル制度」導入と、裁量労働制の対象拡大について追及。あらかじめ決められた時間しか働いたと見なされない裁量労働制が拡大されれば、高橋さんのような広告営業も対象になると指摘しました。安倍首相は「相当絞られる」というだけで否定できませんでした。

 塩崎厚労相は、成果で評価するという「高度プロフェッショナル制度」について、時間規制が適用除外になり、成果を評価されると答弁。田村氏は「成果が出るまで働くことが求められる。過労死も自己責任になる」と批判しました。

 さらに、田村氏は、安倍内閣が残業時間の上限について過労死ライン(月80時間以上)を上回る方向で調整していると報じられている点を批判し、「大臣告示を法制化すべきだ」と主張しました。安倍首相は「(労働時間の)上限を決めるにあたっては、過労死基準をクリアすることは前提だ」と答えました。

 

論戦ハイライト
   ― 安倍「働き方改革」 正体見えた

31日の参院予算委員会で質問に立った日本共産党の田村智子副委員長。安倍内閣の「働き方改革」の危険な実態を浮き彫りにしました。

図

 

国際的に遅れた日本

 

田 村「ILO条約批准を」

 

厚労相「慎重に」

 

 EU(欧州連合)では労働時間の上限や「インターバル規制」(連続休憩時間=11時間)を定めているのに、日本は国際労働機関(ILO)1号条約(1日8時間、週48時間労働)はじめ、労働時間に関する10の条約を一つも批准していません。

 

 田村 労働時間という基本的な労働条件で国際基準を受け入れようとしていない。この政府の姿勢のもとで過労死という世界が驚く異様な事態が起きている。

 

 塩崎恭久厚労相 わが国は三六協定の締結によって週48時間を超えて上限を定めることができるため、批准については慎重な検討が必要だ。

 

 田村 現行と変わらなくていいという答弁だ。それで「働き方改革」ができるのか。

 

写真

(写真)電通本社ビル=東京都港区

 

電通 過労自殺事件

 

田村「自己申告制が隠れみのに」

 

厚労相「通達が守られていない」

 

 田村氏は、大手広告会社の電通に入社して1年足らずの高橋まつりさんが過労自殺した事件(2015年12月)を取り上げました。

 

 労働基準法は労働時間について「1日8時間、週40時間」と定めていますが、労使で取り決める「三六協定」の特別条項があれば、大臣告示の上限基準「週15時間」「月45時間」「年360時間」を超えて働かせることが可能です。高橋さんは月130時間を超える残業時間があったにもかかわらず、「三六協定」(残業時間の上限月70時間)に収まるよう、労働時間を「自己申告」させられていました。

 

図

 

 田村 労働時間を「自己申告制」とすることで「三六協定」さえ歯止めにもならなかったということだ。

 

 塩崎厚労相 (自己申告は)労働時間管理があいまいになりがちである。

 

 田村 自己申告制は長時間労働の隠れみのになっている。

 

 厚労相の「4・6通達」(2001年)では、自己申告された時間が実際と合致しているか、必要に応じて実態を調査するなど、労働時間について適正な管理を企業側に義務付けています。

 

 田村 電通が労働時間の管理を徹底していたら、高橋まつりさんを死にいたらしめることはなかったのではないか。

 

 厚労相 通達が守られていないということに問題がある。

 

 田村 事件を繰り返さないと言うなら、労働者一人ひとりの労働時間を適正に管理する責任を企業に徹底する。厳正な実施を求めることが必要ではないか。

 

 安倍首相 自己申告により把握する場合、実際に働いた時間と自己申告により把握した時間との間にかい離があってはならない。昨年に策定したガイドラインに基づき監督、指導を徹底していく。

 

図

 

残業代ゼロ法案

 

厚労相「時間規制を外し成果で評価」

 

田村「過労死も自己責任にされる」

 

 田村氏は、政府の残業代ゼロ法案(労働基準法改定案)について、労使で決める「みなし時間」を超えて働いても残業代が払われない「裁量労働制」の対象業務が拡大されることを追及しました。

 

 今回の改定で、専門業務、企画業務に加えて新たに「課題解決型提案営業」が対象となります。

 

 田村 電通で高橋まつりさんの行っていたインターネット広告に関する企画・提案の業務がこれに該当する。

 

 厚労相 適用対象は、大臣告示で3年ないし5年程度の職務経験をへた人だ。新入社員の高橋さんは対象にならない。

 

 田村 広告業務全体は対象になりえないということか。

 

 厚労相 企業全体のイメージ戦略をどうするかという大きな話の場合はありえるかもわからない。

 

 田村 いまの電通に「裁量労働制」を適用したら、労働者全員「残業代ゼロ」になる。

 

図

 

 企業の労働時間管理の責任をさらに後退させるのが、時間でなく成果で評価する「高度プロフェッショナル制度」です。

 

 田村氏の質問に塩崎氏は「労働時間の規制は、適用除外する」と言明。田村氏が、深夜・休日労働の割増賃金の支払い義務がある「裁量労働制」との違いを聞くと、塩崎氏は「“高度プロフェッショナル制度”は残業代込みの年俸制だ」と述べ、時間外労働の割増賃金さえないことを認めました。

 

 さらに同制度には、労働時間や業務のやり方に使用者が具体的に指示することを禁じる規定がありません。

 

 厚労相 裁量労働制以上に労働時間などについて、労働者に裁量をまったく委ねる制度になっている。

 

 田村 (裁量に委ねるという)条文すらない。成果をあげるために長時間労働へと駆り立てられていく。過労死さえも自己責任にされてしまう。

 

 政府の検討する残業時間の規制が、繁忙期には過労死ライン(月80時間)を超える、「月100時間、2カ月平均80時間」を上限にすると報道されています。

 

 田村氏は「過労死ラインまで働くことを法律で認めるのと同じだ。絶対にやってはならない」と強調。繁忙期であっても大臣告示(週15時間、月45時間、年360時間)以内にするべきだと求めました。安倍首相は「働き方改革実現会議でこれから検討していく。過労死ラインをクリアすることが前提だ。さまざまな視点から議論していく」と答えました。

 

法令違反のヤマトHD社長

 

働き方懇談会に参加

 

田村氏追及

 

 田村氏は、「不払い残業」への厳しい対処が求められるとして、ヤマト運輸の支店(神奈川県)が不払い残業の是正勧告(2016年8月)を受けた問題をとりあげました。

 

 同社の支店では、時間外割増賃金未払いの是正勧告や、過労死、過労自殺の認定など、法令違反が相次いできたと指摘し、「特段の厳しい措置が必要だ」、「事業所のもぐらたたきではなく、本社に厳しい措置を」と求めました。

 

 安倍晋三首相は「本社にしっかり入って、働かせ方を徹底的に調査していかなければならない」と答弁しました。

 

 田村氏は、法令違反を繰り返してきたヤマトホールディングスの社長が、塩崎厚労相による指名で厚労省の懇談会「働き方の未来2035」のメンバーに入っていると指摘。塩崎氏は「法令違反しているかは別問題」、「経営の立場の方としてご意見を聞く一人」と正当化しました。安倍首相は「働き方にかかわることであれば考慮していく必要がある」と述べざるを得ませんでした。

 

 田村氏は「『働き方改革』の“底”が見えた」、「企業犯罪を犯すような(企業の)トップの意見をありがたがって聞くような『働き方改革』ではだめだ」と批判しました。

 

日立 巨利上げリストラ

 

田村 人権侵害やめさせよ

 

首相 違法行為許されない

 

 田村氏は、巨額の黒字を出しているにもかかわらずリストラを断行している企業があると追及しました。なかでも日立製作所は2015年3月期に史上最高益を記録し、内部留保も3・3兆円を超えている一方で、「利益率達成のため」として15、16年に6000人の人員削減を進めています。仕事を取り上げ、「ベテランはいらない」「(日立での仕事にこだわっている限り)面談を続ける」など人権侵害の退職強要を行っています。

 

 田村 利益を上げるため、経営強化のためといえばこんな理不尽なことが許されるのか。

 

 安倍首相 ことさら多数回、長期にわたるなど、自由な意思決定が妨げられるような状況での退職勧奨行為は違法な権利侵害となるとの裁判例があるように、企業において違法な退職勧奨等が行われることは許されるものではない。

 

 田村氏は、「日立に対し直ちに聞き取りなど行って、実態を調査するべきだ。経営者の失敗を労働者に押し付けるのは立派な改革とはいえない。『働き方改革』というなら労働者の権利に立って、企業の雇用責任をきちんと問うべきだ」と求めました。

 

“安倍政権の正体見たり”反響次々

 

 31日の参院予算委員会で過労死・長時間労働問題を追及した日本共産党の田村智子議員の質問に「(共産党の)議員が増えるというのはこういうことなのかと思った。迫力があってすばらしかった」(京都府内の女性)などの感想・激励が相次いで寄せられました。

 

 身内のヤマト運輸社員が疲れ果て過労死を心配しているという東京・世田谷区の女性は、田村議員の追及に安倍晋三首相や塩崎恭久厚労相が「オタオタしていた」と述べ、「『働き方改革委員会』にヤマト運輸の社長を入れるなど、とんでもないことだ」と電話で怒りをあらわにしました。

 

 ラジオで聞いた愛知県の男性労働者は、「何度も『その通り』とうなずきながら聞いていた。ブラック企業に後押しされる安倍政権の正体見たりという思いだった」と語りました。

 

 外資系企業での勤務経験を持つ「自民党員」という男性は、「本人希望」で裁量労働制が強化される「高度プロフェッショナル制度」について、「この制度を選択しないと昇格や昇給が不利となり、昇格権・昇給権は企業が握るので、オーバーワーク社員を増産します」と警告。「他の過労死の犠牲者を出さないようにしていただくことを心から祈ります」と訴えるメールを寄せました。

 

 

 


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