ローズ
2018年05月26日 | 詩
花びらの重なりの緊密さに害が及んで
ゆるく結ばれていた手と手も離れていく
夕暮れが曇り空へ
おずおず別れを告げ始めるあたり
坂道を登っていく車を背後に
私は中腹で立ち止まり地図を確かめる
霧に包まれた荒野のような頭の中から
かかとが交互に出ていった
都会に紛れ込む
森のほうへと
澄んだ鳥の声は姿を持たないまま
光を受けた雨粒のように降る
窓がある
初めて聞く音楽の中に
遠い昔の記憶が形も色も
少しも損なわれることなく残っていた
少しも損なわれることのない胸の奥の
一度も住んだことのない家の庭で
咲き続けている薔薇があった
笑い声には棘があるから魅惑的
心細さには泥が混じるから幻想的
現実などほとんど残されていない
霧が晴れてくると絡まり合った植物が脈打つ
眼はずっと外を向いているのに
いつも記憶を見ている
私の知らないイメージさえ
知らぬ間に繰り返されている
足の裏が絨毯に潜り
がらんとした部屋に延びた
淡い光を踏んで
土と草を感じていく
いつか私が息絶えた時
そこにあるのは
もう誰にも見ることのできない
記憶の亡骸
ゆるく結ばれていた手と手も離れていく
夕暮れが曇り空へ
おずおず別れを告げ始めるあたり
坂道を登っていく車を背後に
私は中腹で立ち止まり地図を確かめる
霧に包まれた荒野のような頭の中から
かかとが交互に出ていった
都会に紛れ込む
森のほうへと
澄んだ鳥の声は姿を持たないまま
光を受けた雨粒のように降る
窓がある
初めて聞く音楽の中に
遠い昔の記憶が形も色も
少しも損なわれることなく残っていた
少しも損なわれることのない胸の奥の
一度も住んだことのない家の庭で
咲き続けている薔薇があった
笑い声には棘があるから魅惑的
心細さには泥が混じるから幻想的
現実などほとんど残されていない
霧が晴れてくると絡まり合った植物が脈打つ
眼はずっと外を向いているのに
いつも記憶を見ている
私の知らないイメージさえ
知らぬ間に繰り返されている
足の裏が絨毯に潜り
がらんとした部屋に延びた
淡い光を踏んで
土と草を感じていく
いつか私が息絶えた時
そこにあるのは
もう誰にも見ることのできない
記憶の亡骸