MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯21 がんばれ!朝日

2013年06月24日 | 日記・エッセイ・コラム


 Wikipediaによれば、朝日新聞は2012年下半期の販売部数764万部(朝刊)を誇り、国内では読売新聞の994万部に次ぐ業界第2位につける日本有数の大メディアです。

 とはいえ購読部数はここのところ大きくその数を減らしているとされ、2007年から2011年までの4年間でも約28万部の減少が見られたということです。

 ただし、それはこと「朝日」に限った事情ではなく、新聞の購読部数全体を見ても同じ4年間に一般紙全体で200万部近く落ち込んでいる状況にあるようです。しかし、(統計数字は、日本新聞協会などから拾っていますので正確なものではありませんが)他の全国紙との比較においても「朝日」の落ち込みはなお顕著という指摘があります。

 朝日新聞のHPでは、その購読者層は他紙に比べて高学歴で、年収1千万円を超える世帯が購読者全体の37%を占めるなど、ホワイトカラー層が多く平均世帯年収が高いことを強調してPRしています。

 これは、(少しうがった見方をすれば)「だから、エリートが読む新聞ですよ」と、まあそういうことでしょうか…)。しかしこの朝日新聞、1977年に我が国の新聞発行部数の首位の座を読売新聞に明け渡してからというもの、他紙との販売戦略の違いなどもあり、少なくとも営業面ではやや精彩を欠いている状況にあることは事実でしょう。

 その朝日新聞が日本のいわゆる「リベラル」を代表するメディアを標榜し、そうした立場から世論の形成を目指してきたということには異論は少ないのではないかと思います。私の個人的なイメージでも、その立ち位置は時の権力に流されることなく、利益とか世俗のしがらみなどから常に一定の距離を保った客観的でスマートなものであったと記憶しています。

 私の家でも、物心ついた頃から「新聞」と言えば朝日新聞のことを指していました。父も母も毎朝朝日新聞を隅々までよく読み「天声人語」を食卓で話題にするような、そんな典型的な日本のホワイトカラーでありました。

 しかし、昨今の世情に関する様々な記事を読むにつけ、また記者から取材を受け、翌日の朝刊でその内容を確認するにつけ、最近の朝日新聞の在り様に一種の疑問を感じる機会が大変多くなったような気がしてこの文章を書いています。

 報道機関はひとつの「権力」だと主張する政治家がたくさんいます。読者の意識を誘導し、(その政治家)自らの意図するところと違う物語を作ってしまうと…。

 特に日本を代表する三大紙、五大紙ともなれば、世論への影響にも絶大なものがあるでしょう。そうした「権力」を有することを前提に、新聞は「公器」であると言われてきましたし、現在の日本の各メディアに携わる皆さんも、程度の差はあるにしてもそうした矜持を持って報道に携わっていることと思います。

 「そんなことは分かっているさ。」新聞記者の皆さんはおっしゃるでしょう。そうだと思います。また、そうであってほしいと思います。

 国民の「知る権利」「報道の自由」を侵害する行為への痛烈な反発。これ自体は報道機関にとって大変必要な姿勢ではないかと私も思います。しかし、権力を身につけた者に最も必要とされるのは、影響力の「自覚」とそこを起点とする「謙虚さ」という基本的な姿勢ではないかと私は思っています。

 報道機関の仕事というのは、一つの出来事を正確な情報として読者に伝えること。また、読者から期待されているのは、一つの出来事にも様々な見方があること、見落とされてしまうような現場の声があることなどをきちんと拾って伝えてくれることだと私は思っています。そして、こうしたものは、ひとつひとつの謙虚な取材の積み重ねからしか生まれてこないのではないでしょうか。

 朝日新聞の話でした。

 今、いわゆる巷の「ホワイトカラー」であるところのこれまでの愛読者が、朝日新聞から離れていきつつあるのはなぜなのでしょうか。世論が右傾化しているから?私はそれは違うと思います。

 若い朝日の記者さんがどのような葛藤の中から記事を絞り出しているのか、それは分からないわけではありません。地道な取材に汗をかいているたくさんの記者達がいることも知っています。しかし、それでもあえて「がんはれ!朝日」と私は言いたいと思います。

 事実が先にあるのか、物語が先にあるのか。結論は取材の先にあるものであって、導き出される結論も一つである必要はありません。見方、感じ方は読者ごとに、そして記者ごとにいろいろあって良いのではないでしょうか。

 新聞は「権力」ではないのだから、記者の皆さんには是非イデオロギーを超え、読者に対して是非謙虚に向き合い記事を書いてもらいたいと願うところ切であります。



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