少し前のデータになりますが、平成29年の『犯罪白書』によれば、2016年の刑法犯検挙者のうち65歳以上の高齢者はほかの年齢層と比較して最も多く、全体の20.8%を占めていたということです。
同白書によれば、特に「暴行」で検挙された高齢者は20年前の約40倍にのぼっていたとのこと。そう言えば、夜の駅などで駅員などにキレて掴みかかる…といった高齢者の暴力事件が増えているという話もよく耳にするところです。
実際、企業のカスタマーセンターを運営している知人の話を聞くと、クレームの現場では今では高齢者のボリュームゾーンとなっている「団塊の世代」が、モンスターとして確固たる地位を築いている由。正論を盾に説教をしながら、しっかりとその存在感を発揮しているようです。
学生運動で理論を磨き、社会や政治への関心も強い彼らのこと。年老いたとはいえ今でも自分の生き様に強い自信とプライドを持ち、「企業戦士」として激しい競争社会で身につけた交渉力を武器に、相手を「論破」し続けているのでしょう。
ともあれ、政治・経済の世界から犯罪に至るまで、高齢者の活躍の場が広がっているのは事実のようです。国民の3人にひとりが65歳以上の高齢者になんなんとしているのですから、それもまあ仕方のないこと。中には「やらかして」しまうじいちゃん・ばあちゃんがいてもおかしくはありません。
7月25日の情報サイト「JBpress」に、ジャーナリストの山田 稔(やまだ・みのる)氏が、『窃盗からわいせつまで「超高齢者犯罪」が頻発するシルバー危機社会の深刻度』と題する一文を寄せていたので、参考までに概要を残しておきたいと思います。
社会の高齢化が急速に進む中で、高齢者による自動車暴走事故や認知症患者増加の問題が盛んにクローズアップされている。そうした中でもう一つ見過ごすことのできない大きな問題が、高齢者が加害者となる、「高齢者犯罪」の増加だと山田氏はこの論考で指摘しています。
総人口に占める高齢者の比率が高まれば、犯罪が増えることも当然想定される。そこで、法務省が毎年発行している「犯罪白書」(令和5年版)を見てみると、65歳以上の高齢者の検挙人員は平成20年(2008年)の4万8805人がピークで、その後高止まりから減少に転じ、令和4年(2022年)は3万9144人だったということです。
しかしその一方で、70歳以上は平成23年(2011年)以降検挙数が増え続け、令和4年は3万283人、なんと高齢者全体の77.4%を占めるまでになっている由。他の年齢層で検挙者の減少傾向が続く中、全検挙者に占める高齢者の割合はほぼ一貫して上昇し続けており、令和4年は23.1%に達しおよそ4件に1件が高齢者犯罪だと氏は説明しています。
それでは、高齢者たちは一体どのような罪で検挙されているのか。「令和4年の刑法犯に関する統計資料」(警察庁)によると、高齢者の検挙人員が多い犯罪の上位には、①窃盗/2万6866人(全体の33.9%)、うち万引き1万9309人(同42.1%)、②暴行/4107人(同17.1%)、③占有離脱物横領/1879人(同22.4%)の3つが挙げられるとのこと。もっとも、これらの犯罪は令和に入ってから減少傾向にあり、例えば「窃盗」は平成26年(2014年)には検挙者が3万4518人いたが、現在では22%も減少しているということです。
一方、近年(特筆して)増加傾向にあるのが「性犯罪」だと氏は指摘しています。平成25年(2013年)はわずか20人(全体の2.1%)だった強制性交等が、令和4年(2022年)は41人(同3.1%)と倍増。強制わいせつは、平成25年(2013年)の192人(7.7%)が令和4年(2022年)は331人(10.8%)と1.7倍に急増しているということです。
口は悪いですが、(いわゆる)「エロじじい」もそれだけ増えているということでしょうか。高齢者が身も心も元気なのは悪いことではありませんが、加齢により自制心をコントロールできない高齢者が増えているとなれば必要な対応もあるかもしれません。
さて、高齢者の犯罪が増えれば、当然、刑務所に収容される受刑者も増加するはず。 高齢入所受刑者は平成28年(2016年)に2498人と、平成元年以降で最多となった後、29年以降は2100─2200人台で推移し、令和4年(2022年)は2025人まで減少していると氏は説明しています。
もっとも、高齢者率は14.0%で約20年前の平成15年(2003年)に比べ9.7ポイント上昇。中でも70歳以上の入所受刑者数は1342人と平成15年の2.8倍にまで増えており、高齢者全体に占める割合も66%と高率だということです。
やはり、ここでもその存在感を示しているのが、件の「団塊の世代」ということでしょう。中でも、特に女性受刑者で見ると令和4年の70歳以上は256人で、平成15年の実に5.4倍に達しているということです。
超高齢化社会が進むこれからの時代、高齢者人口のさらなる増加、社会における経済格差の拡大などで、事態はますます悪化していく可能性があると氏はこの論考の最後に綴っています。
年老いた親を施設に入れたからといって安心はできない。いつなんどき老親が、セクハラや性犯罪の「加害者」になるかもしれません。思いもかけないところで進んでいる高齢化。実は、切実な問題がごく身近にも潜んでいると話す山田氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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