
経済的に貧困状態にある妊婦は糖尿病や性感染症を患っている割合が高く、胎児への健康被害が生じる危険性があることが国内5病院の共同調査で明らかになったと、9月14日の西日本新聞は伝えています。
衛生状態、栄養状態の悪化や虐待など、貧困が子どもたちにもたらす影響については様々な調査が始められている昨今ですが、胎児期から影響を及ぼしていることを示したデータはほとんどないのが現状です。
そうした中、記事は調査結果から、妊婦に対する(妊娠初期からの)早期支援の必要性を改めて強く指摘しています。
今回の調査は、青森市、川崎市、堺市、福岡市、那覇市の病院が連携し、2014年4月から約1年間かけて行われたもので、出産した母親677人を、国の基準に当てはめ貧困群(293世帯)と非貧困群(384世帯)に分けて比較しています。
その結果、妊娠時に糖尿病や耐糖能異常と診断された母親が非貧困群では2.88%であったのに対し貧困群は5.4%と2倍近い割合で、さらに貧血症も貧困群の24・2%(非貧困群16・1%)で見られたということです。
妊婦の糖尿病や貧血は、早産や子どもの低体重、先天性奇形に影響するとされており、こうした妊婦の健康状態が新生児の健康障害のリスクを高めていることが判ります。
また、妊娠時に喫煙していた割合も、非貧困群で25・3%だったものが貧困群では37・6%であるなど、生活習慣の違いが新生児に及ぼすリスクも明らかになっています。
加えて、(子どもにも感染しかねない)クラミジアや梅毒などの性感染症に罹患していた妊婦の割合は、非貧困群の1・2%に対し貧困群では7・9%と6倍以上に及んでおり、貧困と親和性の高い「生活の乱れ」が新生児に及ぼす影響が、実際、無視できない状況にあるのもどうやら事実のようです。
一方、調査は、これらの母親から生まれてきた赤ちゃんの健康状態についても比較しています。
例えば、「低血糖」は、糖尿病や耐糖能異常の母から生まれた子に起きやすい症状の一つとされているということですが、放置すると脳に障害を及ぼしかねない程度の低血糖の症状を示す赤ちゃんの割合は、非貧困群では0.8%だったものが貧困群では3・1%と4倍近く高いことが明らかになっています。
また、新生児に対する1カ月健診では、貧困群の14・6%の母子で「育児に問題あり」と診断(非貧困群では8・0%)されており、その内容は、母の育児放棄や育児不慣れが(貧困群全体の)9.4%と最も多く、次いで母の精神疾患が2.8%で、パートナーから母親へのDVも1.0%で見られたということです。
一方、調査では、妊婦の過去の人工妊娠中絶経験や10代での妊娠歴も妊娠歴についても尋ねています。
聞き取り調査の結果、貧困群では中絶歴や10代での妊娠歴がある母親がいずれも4人に1人と(かなり)高い割合を示しており、全体の13.7%が母子家庭で、8.4%は結婚歴自体がなかったということです。
また、母親の最終学歴は、貧困群では中卒や高校中退が25・4%(非貧困群9・2%)を占め、低学歴が若年出産や未婚での出産といった不安定な育児環境につながっている傾向もみられたと記事は指摘しています。
調査の取りまとめを担当した福岡市の千鳥橋病院の小児科医山口英里氏は、子供の健康格差が学力や就労の格差につながりかねない現状を踏まえ、貧困の連鎖を止めるために、生活改善など妊娠初期からの支援の必要性を強く訴えているということです。
「親は選べない」とよく言います。
こうした状況は今に始まったことではないのでしょうが、生まれ出る家庭の経済状態によって子供たちが(既に)負ってしまっている様々なリスクについては、行政をはじめとした周囲の大人がきちんと確認し、慮らなければならないことが分かります。
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