日本において、1971年から1974年までに生まれた世代を総称して「団塊ジュニア」と呼ぶことが多いようです。
団塊ジュニアが生まれた1970年代前半は、大阪万博や浅間山荘事件など「冷戦の折り返し地点」となる出来事が発生し、石油ショックによって高度経済成長が終息して安定成長期に移行し始めた時代でした。
親たちの世代は田舎育ちが多いのに対して、団塊ジュニアは都会育ちの割合が高く、その多くが大都市やその近郊のベッドタウンで育った彼らの小学校時代は、校内暴力が深刻化しいじめや不登校が社会問題となり始めた時期に重なります。
また学校週5日制はまだ実施されておらず、授業内容も多かったため「落ちこぼれ」も社会問題となっていた一方で、1980年代に実施されたゆとりカリキュラムで学んだ「ゆとり世代」の一員であるとも言えます。
団塊ジュニアは「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)の子供として、毎年200万人以上が生まれた世代です。
世代人口は(日本の長い歴史上でも)第1次ベビーブームの団塊の世代に次いで多く、親たちの世代よりも大学受験率が高かったことから、受験戦争が最も厳しかった世代であると言われています。
一方、彼らが成長し、就職活動を行い始めた1990年代初頭の日本では、企業はバブル崩壊の後始末や悪影響の対処に追われ新たな人材を積極的に採用したり、将来に向けて育成したりする余裕もありませんでした。
同時期に高校や大学を卒業する卒業生が多いところにバブル経済が崩壊し、急転直下で就職氷河期に突入した(そういう意味では)まさに「恵まれない世代」と言うことができるでしょう。
その結果、この世代には就職活動に軒並み失敗しフリーターや派遣労働者といった非正規雇用労働者にならざるを得なかった者も多く、国立大学や難関私立大学を卒業した者でさえ中小企業の正社員にありつければ「御の字」という状況にあったことも事実です。
こうして「不運の世代」とも呼ばれる団塊ジュニアは、現在の日本の企業や社会の中でどのような位置を占めているのか?
11月2日の日本経済新聞では、そんな彼らのポジションについて、「出世遅れ転職もできず 割を食う団塊ジュニア」と題する興味深い記事を掲載しています。
団塊の世代では当たり前であった「年功序列」の賃金体系が崩れ、今の日本企業では長年働く社員ほど賃金が伸びにくくなっている。中でも転機を迎えているのが、40代を迎えた団塊ジュニアの世代だとこの記事は指摘しています。
バブル期に採用された多くの先輩に阻まれて出世が遅れ、賃金も上がらない。彼らの賃金が伸び悩んだ背景には、収益力が落ちた会社が人件費を抑えるため(人口構成から言っても多い)彼らの世代の賃金を上げるわけにはいかなかったという事情があるということです。
さらに困ったことに、彼らのすぐ上にはバブル世代が詰まっている。昇進しようにもポストが空かず、団塊ジュニアは「ずっとヒラ社員」の危機にあると記事はしています。
大和総研によると、2016年に40代で部長に就いている人の割合は2.5%で、課長は11.2%。この比率は00年代後半から低下が目立ち、10年前より部長が1.6ポイント、課長は2.6ポイント下がったということです。
団塊ジュニアの40代は人数が多く、人件費に占める割合も大きい。企業はボリュームゾーンの昇進を遅らせることで人件費の削減を図っているところであり、人件費をかけてまでして部課長を増やす気はないと記事はしています。
さらに、部課長になったとしても、彼らの給料が増え続けるとは限らないと記事は言います。2016年時点で企業の7割は、課長以上の管理職に仕事の中身に応じて給料を決める「役割・職務給」を採用しており、今や多くの企業で仕事で成果を残せなければ賃金は増えない仕組みを導入していることが判ります。
こうして昇給が抑えられている一方で、企業は良い人材を採用するため「入り口」を飾る。記事によれば、新卒の初任給が少しずつ増えてきているにもかかわらず、転職を経験せず長く働く40代の社員は賃金が伸びにくいのが現実で、その結果、年齢順に賃金の水準を並べた「賃金カーブ」は傾きが緩やかになっているということです。
実際に、第2次安倍政権が動き出した2012年12月以降、世代別にみて就業者に占める比率が目立って上がったのは(定年後再雇用の)65歳以上と、賃金が伸びにくい45~54歳だとデータは示しています。
一方、90年代後半の厳しい雇用環境のもとでやむなく非正規社員になった人は、職場内訓練(OJT)によるスキルアップの機会も失ったと記事はしています。また、スキルが乏しく転職できないこうした人たちが、企業の賃上げ意欲を下げているとの指摘もあるようです。
最近の経済指標などを見る限り、足元では人手不足感の強い業種ほど賃上げ率が低い傾向にあるということです。人手が足りない業種にスキルが乏しく転職しにくい労働者が集まっていて、経営者が賃上げの必要を感じていないからではないかと記事は説明しています。
結局、賃金上昇を伴う転職が活発にならないと人材が低収益の事業にとどまり続けることになり、特にこの世代の収入賃金や待遇の収入に不利に働く可能性が高いということでしょうか。
で、あれば、そのためにも彼ら団塊ジュニアが賃金上昇に必要なスキルを獲得し、自らの手で新たな「飯のタネ」を身に着けていけるような支援を続けていく必要がありそうです。
「不運」は、世の中がいくら人手不足といわれるようになっても、すでに働いている彼らの賃上げにはつながらないところにある。バブルの後遺症は、(実は)こうしたところにも大きく残されていると説明するこの記事の指摘を、私も興味深く受け止めたところです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます