先日、時事通信社主催の政局講演会を聞きました。講演終了後の質疑の席で、「参院選後の最も身近な最も喫緊の政策課題は何だとも思うか?」との会場からの質問に対し、講師の浅川博忠氏(政治評論家)は「それは人口問題である」と明言されていました。
現在の日本の合計特殊出生率は1.41。このペースで少子化が進んだ場合、90年後の日本の人口は4800万人程度となるということです。経済規模に大きな影響がある人口の、急激な減少への抜本的な対策に踏み込まない限り、日本の長期デフレからの脱却は難しいだろうというのが浅川氏の見解です。
さらに、今までの政権は保育所を増やすなどの票につながる対策だけはとってきたが、あとは女性の少子化担当大臣を置いてやった振りだけし、実は誰も本気でこの問題に取り組んでこなかった。…浅川氏からはこのような手厳しい指摘もありました。
実際、日本における出生率の低化がここまで顕著になったのは何故なのか。人口の減少がさらに進めば(少なくとも今後30年間程度は「確実」に人口の減少が続くわけですが)世の中にどのような影響があるかについて政府としてきちんと分析し、社会保障の分野ばかりでなくそうした変化全体への準備を着々と進めていかなければならない時期に来ていることは明白です。
こうした話は時間がかかります。本気を出さなければ間に合いません。
もっとも、人口が少ないこと自体が問題なのではないでしょう。国土面積や可住地面積当たりの人口が日本より少ない先進国はたくさんあります。問題となるのはその変化があまりにも急激であるというところにあります。
社会のバランスが大きく崩れ不安定になったとき何が起こるのか。それを回避するためにどのような対策を講じる必要があるのか。これは、どの世代が損をするとか得だとかいう感情的な話ではなく、人口の変化をどのようにソフトランディングさせるかという、期間の限られた、きわめてクールな政策論でなければなりません。
また、人口減少の原因となる少子化への対策について、これまで日本の政治や行政が「女性のワークライフ」という観点から真剣に考えてこなかったとする浅川氏の指摘も的を射たものだと思います。
だいぶ抽象的な表現になってしまいますが、少子化やその原因ともなっている晩婚化の原因についてきちんと答えを出し、若い世代の人々が将来の不安なく生活し、結婚し(別に「結婚」しなくてもいいのですが)、子を産み育てられる環境をつくることが喫緊の課題となっています。
その上で、社会や経済の現場で女性にいかに活躍してもらえるか。これからの日本の浮沈(だけでなく広く国民の幸福)のカギになるのではないかと、私も少し本気になって考えたいと感じたところです。
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