MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯155 トヨタ「ヴィッツ」のイメージ戦略

2014年04月27日 | 日記・エッセイ・コラム
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 4月25日の主要各紙に、トヨタ「ヴィッツ」の全面広告が掲載されていました。「Run こころ
はずむ まいにち」をメインキャッチに、イメージカラーの綺麗なイエローを前面に押し出した軽快な印象が見る者の心を掴む、そんな心憎い一枚です。

 良く見るとこの広告、さすがにトヨタが力を入れている車種だけあって随分と丁寧に作り込まれていることが分かります。「スニーカー」と「小型車」との組み合わせ自体は、「斬新」という表現からはかなり距離があるかもしれません。

 しかしこの広告、「車」そのもの(それもボディの全体)を中央に配置した奇をてらわないオーソドックスなデザイン手法を取りながらも、細かく見ていくとルーフからフロントガラス、ボンネットにかけてのリフレクションがスニーカーの靴ひものホワイトとシンメトリーを構成していたり、フロントグリルやタイヤ(特に後輪)周辺の暗部が靴のソールや靴底のブラックと合わさって見事な安定感を産みだしていたりすることに気付きます。

 車体を斜め下部から撮った写真は、三代目ヴィッツの持つ(見方によってはルノーっぽい)ヨーロピアンで少しシャープなデザインや軽快なイメージを上手く表現できているように感じられます。また、紙面の諸所に控えめに置かれた性能データ群は、(スニーカーに「25.0」の数字を抜くのはすこし「悪ノリ」の観もありますが)ヴィッツの持つ燃費の良さなどの特徴をさりげなく主張することに成功しているようです。

 さらに、イエローを背景にイエローのボディカラーを組み合わせるという大胆な色彩構成を採用することも、デザイナーにとってはかなり勇気の必要な作業だったのではないでしょうか。モデルとなった車体とスニーカーの上下に適当なスペースを配置し適度な「小型感」を醸し出すあまり押しつけがましくない構成についても、ヴィッツの購買層を考えれば必要十分な上品さを醸し出すことに成功していて秀逸だと感じたところです。

 桜の花も散りゴールデンウィークも目の前に迫った新緑の季節、(消費税は上がっちゃったけれど)今度のボーナスを頭金にちょっと気のきいたスニーカーのような「ヴィッツ」に乗って出かけてみようよ!…というこの広告のコンセプトに、多くの消費者が見事に引っ掛かってしまっているかもしれません。

 思えば、ホンダの「シビック」などと比べてかなりドメスティックな車であった「スターレット」の後継車種として開発されたトヨタ「ヴィッツ」も、今や欧州を中心に生産、販売されているトヨタの押しも押されぬ看板車種(現地名「ヤリス」)です。ヨーロッパにおけるトヨタの「顔」として、海外においても(おそらくプリウス以上に)良く知られた存在と言えるでしょう。国内販売が中心であったFR2ボックスの「野暮ったい」デザインイメージから既にかなり以前に解き放たれ、現行の13♯モデルはカローラやアクアなどとも一線を画す国際戦略車ということができます。

 現在トヨタでは、カローラのハイブリッド化を背景に「ラブ&ジーンズ」というキャッチコピーの下、SMAPの木村(拓哉)市長の気取らないジーンズのような(インディゴブルーやグレーの)イメージをカローラに纏わせようという新たな戦略を打ち出しています。そうしたポジショニングのカローラから比べれば、このヴィッツはもう少しはっきりとした「主張のある」イエローを身にまとい、カローラよりも少し若々しいちょっとおしゃれなパーソナルカーとして、その存在感を際立たせようとしているのではないしょうか。

 いずれにしても、(「ラブ&ジーンズ」にしても「Run」にしても)こうした新聞広告を見るだけで、さすがに(連結決算で年間20兆円を超える売り上げを誇る)日本で最大かつ一番勢いのある企業である大トヨタを象徴する「仕上がり」になっているなと感じるのは私だけではないと思います。トヨタのこうした元気が消費者に伝わり、車離れが伝えられて久しい若者の元気に繋がれば日本経済も少しは明るい方向へ向かうのではないかと改めて期待するところです。

※ 自分がデザイナーだったらこの広告のどこを直すのだろうかと、ふと考えてみました。まずは左上部におかれた一連の「Run…」コピーを取り去ることになると思います。次に右上部スペースに「TOYOTA New VIitz 誕生」などのロゴを大きめに入れ、そして最後に、下部のスペースに「免税」と「1,155,600円」と比較的大きめに書き込んでおきたいというところなのですが、さて、皆さんだったらどのようにされるでしょうか?

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