私の事を、一番心配してくれていた最愛の兄が亡くなった。
76歳になったばかりだった。
「多発性骨髄腫」という血液の癌で、余命2年と宣告されていた。
2020年の東京オリンピックには、間に合わないのかなと思っていたところ、
高熱を出し救急車で運ばれ、2019年10月3日に肺炎で旅立った。
兄は、長年船舶関係の仕事をしており、70歳過ぎても会社に必要とされ、勤めていた。
「ようやく辞められたよ。これから好きなことをしてのんびり暮らす」と
連絡をくれてから、半年後に余命宣告されたのだった。
その時に「後輩の為に、辞典作りを我が家でボランティアとしてやっている。
もし見るのだったらメールに添付して送ろうか」と言われたので送ってもらう事にした。
「検査員のためのキーワード辞典」というタイトルで、数枚だったら印刷して保存を
しておこうと考えていたところ、第1巻が57ページ、第2巻が61ページもあり、
印刷は無理! とりあえず「ドキュメント」に保存した。
後に義姉の話で、最後の第3巻を仕上げないまま亡くなった事を知った。
まだ小学生の二人の孫が、成人になるのを見たかっただろうし、
色々な事が、さぞかし心残りだった事と思う。
私はと言えば、何もしたくない、誰とも会いたくない、休みたいと思っているのに、
約束事は守らなければならないし、用事は次から次へと入って来るし、
きついきつい毎日を過ごしている。
心身共にこれほど弱るとは、思いもしなかった。
出かけた日は、家に倒れ込むような形でしばらく動けない。
今は、以前ほどではなくなってきているけれど。
兄はもう居ない。
突然思い出す。
この喪失感はいつ消えるのだろう。