気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 16

2021-12-02 15:47:00 | ストーリー
beautiful world  16






奈生と付き合い始めて3ヶ月

明日から12月
今年 最後の月

街はクリスマス仕様の街灯や飾り付けに変わり
時々クリスマスの音楽も耳にするようになった

奈生との交際は変わらず順調だった――

毎日メールをし 時々電話をする

奈生と付き合うようになって
初めてビデオ通話というスマホ機能を使うようになっていた

やっぱり声だけより顔が見たいからな!

ビデオ通話って本当に近くにいると感じられる
でもその画面の奈生の頬には触れられない

それがもどかしくて
より一層 会いたくて恋しくなる時もある

最近は奈生の仕事が忙しくて直接会う機会が減っていた

今でも時々気になるのは奈生の職場の葉山だった

葉山は毎日会社で奈生と会っていると思うと
やっぱりモヤモヤする

あれ以来 お互い葉山の事には触れていない

でも僕の中ではずっとあいつが気になっていた…


「奈生。今日も仕事忙しかった?」

『うん、月末だから特に(苦笑)』

「職場で、その…忘年会とか、やっぱりあるよなぁ。」

『毎年同じ店でやっていますね(笑)』

もちろん葉山もそこに参加するだろう

「そっか。忘年会の夜、迎えに行こうか。」
酒に弱い君と葉山が一緒だと思うだけで気になる

『え?そんな、遠いし、』

「僕が行きたいんだ。」

『陽太さん、もしかして今 寂しいんですかぁ?(笑)』と奈生が冗談ぽく言った

「寂しいに決まってるだろう(苦笑)」

こんなにも僕は
素直に気持ちを言葉にするようになっていた

『私もです(笑) えへへ(笑)』
照れて笑う君は今も変わらず本当に可愛い

付き合い始めた頃よりずっと
君を好きになっていると実感する


一緒に暮らしたい――

日々少しずつその想いが積もっていた

「奈生… 大事な話があるんだ。」

『なんですか??』

「電話じゃなくて会ってから話すよ(笑)」


―――


部活が終わり生徒を全員学校から送り出した
今夜は平日だけど食事をする約束をした

それは大事な話をするためだ

待ち合わせた駅に行くには1時間近くかかるだろう
早く机の上を片付けて向かわないと約束した時間には間に合いそうもない 


「早見先生、ちょっといいですか?」

鈴木先生が声をかけてきた

「この後予定があるので、今度じゃダメですか?」

「じゃあ手短に。」

廊下は声が響くからと外に出た


鈴木先生はたまたま休日に僕を見かけたと話した
「早見先生はいつから田中と付き合ってたんですか?」

――えっ…
奈生のことを知っている…?

「どうして…鈴木先生が知ってるんですか…?」 

「二人が一緒に歩いてるところを見かけまして。田中は僕が担任していたクラスの生徒だったんですよ。」
 
――は?

「ここの卒業生だったんですか?」


――どういうことだ!?
そんなこと奈生から一言も聞いていない

「まさか知らなかったんですか?早見先生がここに来た時は田中は在校生でいましたよ。でも教科担任じゃなかったらわからない…か…」

「…ええ」
頭が混乱してきた

「本当に知らずに付き合ってたんですね…」

「…はい...全く」

――じゃあ僕のことを奈生は高校生の頃から知ってたことになる


「しまったな… 内緒だったのか。余計な事を言ってしまった。あっ、もう田中も成人してますし僕は二人の恋愛にどうこう口を挟むつもりは全くないですからね(苦笑)」


――奈生は何故それを隠してたんだ…


「早見先生…」


――いつも不自然に駅周辺を気にしてたのも隠していた事と関係していたのか?

「すみません…僕、もう、行かないと…」

どうしてずっと隠してた?
隠す必要なんか何もないだろう?


気付いたら僕は駅まで全力で走っていた

彼女の笑顔がフラッシュバックする

隠さなければいけないような事ってなんだ?

なぜ?
なぜ!?


奈生――





―――――――――――――