気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 24

2022-08-14 20:55:00 | ストーリー
beautiful  world  24



【初めての彼女 (1)】





ーー高3の夏



男ばかり4人で海水浴に来た

「今年こそ彼女作るぞーっ!!うぉーーっ!!」

『ははは!(笑)俺も〜♪』

「叫ぶなよ、かっつん!!恥いわっ!!」



とかく女の子に対して貪欲にギラギラしたかっつんにシンとノブ


海水浴場で遊ぶくらいなら
柔道の稽古をするか大学受験のための勉強をしてる方がいいと断ったら


『この柔道バカ!お前は女子に興味はないのかっっ!?それでも男かっ!!』

とかっつんが捲し立ててきた



『あっ、まさか…お前 男が…』


なんか勘違いしてる!!

『違うっ、そうじゃないし!』


『なら来いよっ♪(笑) 一日くらい息抜きしたって問題無いだろっ!(笑)』



半ばゴリ押しで暑い海水浴場に連れ出されてしまった

子供を連れた家族や
色とりどりの可愛らしい水着の女の子に
ナンパ目的だろうと思われる男も結構いて

海水浴場は賑わっていて
海の家からは音楽が爆音で流れている

息抜き…って


テンションの上がらない僕だけが場違い感を感じていた


『なぁ!あの女の子のグループに声かけようぜ!』

指差した先には
3人組の女の子がいた


ナンパか
マジか…


こっちは男4人
向こうの女の子達は3人


僕は遠慮すると言うと
お前は必要だ!と一番鼻息の荒いかっつんが僕の腕を掴んで言い放った

理由は“高身長で良い身体だから女子寄せ要員だ!”と…

強引に誘ってきた理由ってほんとはそれ?


『だがしかーし!顔は俺が一番だけどなっ!ふふん(笑)』


『は?どの面で言ってんだよ。顔なら俺だろ。』


すかさずシンが突っ込んでいる

『は!?どう見ても俺だろっ!』


かっつんとシンがいつものようにわちゃわちゃやってる間に

さっきの女の子達はどこか行ってしまった



『なぁ〜さっきの女の子達、どっか行っちまったぞぉ?』


のんびり屋のノブがキョロキョロと周囲を見渡した


『なにぃーっ!!!』


あ、ほんとに居ない(苦笑)


『なぁなぁ〜暑いからカキ氷食おうよ〜♪』


『…そうだな。』


一体何しに来たんだよ…(苦笑)



僕も彼女ができたことはなかったけど
今は大学受験と柔道に強く意識が向いていた


そんな時
人生初めての彼女となる女の子と出会った



『おい見ろよ!あの子めっちゃ迫力ないか?』


『足長〜い(笑)』


『モデル?身長高くね?』


どの子の事を言っているのか一目でわかった


175は越えてそうな長身に頭がとても小さい

長身で手足も長くスポーツ選手にも見える引き締まった身体つき

その抜群のスタイルに白いビキニの水着が映えていた


色気より迫力があるって感じで
明らかに一緒にいる女の子達とは雰囲気が違う


すれ違う男達も女の子達も
チラチラとその子を見ていた

あぁ
あの子 明らかに目立ってる(笑)



『ほら見ろ、誰もあの子に声かけらんねぇ様子だ。よし!あの子よりもデカい陽太が勝負してこい!行け!GOだ!!』


『はぁ!?何がGOだ、ヤダよ!』


『…あ。こっち見たよぉ?』


あ、ほんとだ
僕らを見てる


と言うか…
なんか僕を見てるような…


『お、おい…なんか俺らんとこ向かってきてないか…?』


その子がこちらに向かって歩いてきた


『えっ!?、、えっ!?』


かっつんらはその長身の迫力のある彼女にビビり気味で後退りした


そして
僕の前で立ち止まった



ぼ、僕!?
なんで!?



『んんっ!?!?』

かっつんが僕と女の子を交互に見た


『あなた、早見陽太くん、だよね。』



ーーえ??



なんで僕のこと知ってるんだ

『陽太の…知り合い…?(汗)』


動揺したかっつんに
僕は首を横に振った


『…いや、、』



こんなに目立つ容姿の子なら絶対覚えてるはず


『なんで僕のこと、知ってるんですか?』


すると彼女の表情がフッと緩んだ


『柔道の大会で何度か見たことあるわ。あなた、メダル常連選手だから超有名人だもの。』




彼女は僕の1つ歳上の大学生だった


彼女の弟が僕と同い年で柔道をしていて

弟の大会出場の応援でよく試合の応援をしに行っていたからだと話してくれた


近寄り難い迫力があるのに
話すと案外気さくな女の子なのかも


『試合を遠目で見てて、“大きいなー”って思ってたんだけど、近くで見ると思った以上に大きいし背が高いのねっ!ふふっ(笑)』



わ…


綺麗な子だけど
笑顔になると可愛い!


なんかが急にドキドキしてきた



元々 女の子と話すことに慣れてない

だけどこんなにも綺麗で可愛い子から連絡先の交換を求められたら…

ドキドキしながら彼女のメアドと電話番号を携帯に入力した




ーーー



それからは次第にメールのやりとりが増えていき 直接会う約束もした

これって
デートになるのかな…



海で会ったきり
初めて二人だけで会う


考えるだけでドキドキして
どんな話題をふれば盛り上がるのか

どんな所に連れて行けば女の子は喜ぶのか、とか

柔道しか興味がなかった僕は当然知らなくて


かっつんらに聞こうとも考えたけれど

あいつらが女の子のことを知ってるとは到底思えず

逆に僕と彼女との事を
興味津々で執拗に聞かれるのがイヤで

彼女持ちのクラスメイトにこっそり聞いたりしてみた


一応自分なりにリサーチはしたが
当日彼女にも希望を聞いてみたら?とアドバイスされ、そうしようと決めた



ーーー



デートの当日



彼女は半袖のブラウスにデニムのミニスカート姿

どんな服を着ててもスタイルが良いからか

待ち合わせ場所でも彼女は目立っていた

これからデートなんだと思うとますます緊張してくる

どこか行きたいとこある?と聞くと


彼女はもう決めていたようで
僕のリサーチ情報は結局不要だった(苦笑)


彼女の行きたい店や食べたい物を一緒に食べて

なんか本当に僕の彼女みたいな勘違いをしそうになっていた



彼女は僕に自分の事を知ってもらおうと子供の頃からの話を始めた



夏休みには祖父母が住む田舎に家族で帰り

畑の野菜を直接もぎ取って食べたり
近所の子供と川遊びしたなどのエピソードを

僕の隣で楽しそうに話す彼女と川辺の遊歩道を歩いた




彼女は話題も豊富で僕の知らない事も沢山知っていて友達も多いようだ


快活でやりたいことには躊躇なく挑戦し
無理って言葉を知らないパワフルな人だった

子供のように好奇心旺盛
純粋で正直

そういう所にも凄く好感が持てた



『どうして今日僕と会おうと思ってくれたの?』


『そんなの、、早見くんが好きだからだよ(笑)』



すっ、好き!?



『それは… その…』

どういう意味合いの “好き”なのかな…


急に鼓動が早くなってきた




『柔道の試合をしてる早見くんって、闘志の炎が見えるようで “無双か!!”ってくらい強い。本当に格好良いと思うよ。ふふっ(笑)』



あ…

『そっか…ありがと(苦笑)』



なんだ君も同じなんだ

柔道をしてる姿が格好良いから好きって言われたことは今までもあった

確かにそれも僕自身だし
喜ぶべきだところではあるんだけど…



『普段の早見くんって柔和でシャイで可愛いなぁって思ったよ?』



え?


『男のシャイって、なんかナヨってるイメージがあるんだけど(苦笑)』


『なんで?素直で純粋な反応じゃない(笑) 早見くんはちゃんと気遣える人だし、誠実で思慮深い。柔道の時の男らしい無双感とのギャップが凄く素敵だと思うよ。それに柔道から離れてる時のギャップに人間味を感じて良いな、とも思うよ。』


そう思ってくれてたんだ…




柔道では負け知らずの“強い男”


僕を知る人はその印象が強く先行していて

どんな時も“近寄り難い強い男”という勝手なレッテルを貼られていることも少なくなかった

常に男らしいイメージを押し付けてくるというか

確かに柔道に対してはストイックな方だと思うし勝負に負けるのは嫌だ


でもそれが僕の全てじゃない
わかって欲しい

その想いをずっと胸の中に持っていた


でも彼女は
僕の全部を認め
内面も見ようとしてくれている気がした


それがなんだか嬉しくて
ふわふわとした温かいものが湧きあがった


『ねぇ…早見くんって好きな子とかいる?』


『え?』



ドキッとした

好きな子…



この胸の高鳴りが “好き” ってことなら
今 僕は君のことが好きってことになるのかな…



『もし、他に好きな子とかいないならぁ…』


照れくさそうな表情をした


『うん。』


『私と付き合って欲しいなって…思ってるんだけど…』


さらさらと風が吹いて
顔に掛かる髪を耳にかけた


ーー えっ



『僕と…君が?』


『強く男らしい顔とは違う、穏やかで誠実な早見くんも知っちゃってから…段々と早見くんの事ばっか考えてしまうようになって…本気で好きになっちゃった、みたいな?エヘヘ(笑)』



照れを笑顔でごまかしている彼女に
僕の胸はドキドキが止まらなくなった



まるで彼女は

色とりどりの花が沢山詰まった大きな花束のようーー



こんなに素敵な女の子が
 “本気で好き” だと僕に告白してくれたーー




僕は急に顔が熱くなり
心臓は強く鼓動を打ち始めた

多分 今の僕は格好悪いくらい
顔が真っ赤になってる




『私じゃ…ダメかな…』

不安そうな表情をした



『そっ、そんなことないよっ!こちらこそ、よろしくお願いします!』



安堵が混じった嬉しそうな表情で

『嬉しい…(笑)』と呟き微笑んだ




僕には彼女は何事にも自信のある人のように見えていたけれど


でもさっき
僕の返答に不安な表情をし

そしてこんなにも可愛い表情をする人なんだと知った



僕もまた

彼女に対して勝手な思い込みがあったことに気付かされた



僕は彼女のことを全然知らない

恋かどうかの核心もない



でも

もっとこの人のことを知りたいと思った


初めて興味を持った女の子

その子が僕の人生初めての彼女となった





それが


“舞” だった ーー






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